スポーツジャーナリストの二宮清純が、ホットなスポーツの話題やプロ野球レジェンドの歴史などを絡め、独特の切り口で今のカープを伝えていく「二宮清純の追球カープ」。広島アスリートマガジンアプリ内にて公開していたコラムをWEBサイト上でも公開スタート!

 侍ジャパンがオリンピックで悲願の金メダル、2年ぶりの夏の甲子園開幕。上げ潮の野球界に凶報である。

 北海道日本ハムの中田翔が後輩選手に暴力をふるったとして、球団は1、2軍全試合での出場停止処分を科した。期限は無期だ。

 統一選手契約書の第17条(模範行為)には「フェアプレイ」「スポーツマンシップ」「日本国民の模範たるべく努力する」といった文言が並ぶ。これに違反したというのが処分の根拠だ。

 野球界に限らず、かつてスポーツ界において、暴力と指導は切っても切れない関係にあった。それは“愛のムチ”などといった言葉でも明らかだろう。

 いくつもの競技、団体で暴力行為や体罰が相次いだため、2013年4月、JOCや日本体育協会などは連名で「スポーツ界における暴力行為根絶宣言」を行なった。

<本宣言は、スポーツ界における暴力行為が大きな社会問題となっている今日、スポーツの意義や価値を再確認するとともに、我が国におけるスポーツ界から暴力行為を根絶するという強固な意志を表明するものである。>

 にもかかわらず、暴力に関する不祥事が後を絶たないのは、なぜなのか。それは未だにスポーツ界には暴力を容認する空気が残っているからだ。事件が起きても隠蔽し、内々ですまそうとする。今回のような事件は氷山の一角と考えるべきだろう。

 今回の事件を受け、「自覚が足りない」と言ったOBがいた。その通りだが、個人の「自覚」に頼り切りでは、こうした問題はいつまでたっても解決しない。

 そこで提案だ。暴行の中身にもよるが、野球賭博の関与者なみのペナルティーを設けてみてはどうか。いずれにしても、再発防止のためには暴力への明確な抑止力が必要である。

(広島アスリートアプリにて2021年8月16日掲載)

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二宮清純(にのみや せいじゅん)
1960年、愛媛県生まれ。明治大学大学院博士前期課程修了。株式会社スポーツコミュニケーションズ代表取締役。広島大学特別招聘教授。ちゅうごく5県プロスポーツネットワーク 統括マネージャー。フリーのスポーツジャーナリストとしてオリンピック・パラリンピック、サッカーW杯、ラグビーW杯、メジャーリーグなど国内外で幅広い取材活動を展開。『広島カープ 最強のベストナイン』(光文社新書)などプロ野球に関する著書多数。ウェブマガジン「SPORTS COMMUNICATIONS」も主宰する。