パ・リーグの首位を快走するオリックス。若手選手を積極的に起用し、世代交代を進めながら勝つ野球を実践している。そのチームの在り方は、現状のカープと似ている部分がおおいにある。オリックスの躍進にカープ逆襲のヒントがないか、カープOBの笘篠賢治氏に聞いた。

カープ二軍の本拠地である由宇球場で、一軍を目指し鍛錬を続ける選手たち(2021年3月撮影)

◆カープで培った野球観を、オリックスで実践する2人のコーチ

 今季のカープはなかなか打順を固定できていませんが、固定できないことが低迷の原因ではないと思います。前半戦の各チームの打順パターンを見ていくと、カープはセ・リーグで一番多い75通り。パ・リーグに目を移すと、一番多いのは、前半戦を首位で折り返したオリックスの81通り。ちなみに、チーム全体の前半戦の得点を見ると、カープが298得点(リーグ5位)で、オリックスは361得点(リーグ2位)となっています。

 打順パターンを見ても分かる通り、カープ同様にオリックスも、若手選手を積極的に起用し、世代交代を進めています。そのなかで『育てながら勝つ』を見事に実践しているチームだと思います。二軍監督などを務め一軍監督に就任した中嶋(聡)監督の影響も大きいと思いますが、今シーズンから、カープの野球を熟知した、水本(勝己)ヘッドコーチと梵(英心)打撃コーチが加入したのも、躍進の理由の一つだと思いますね。

 水本ヘッドコーチは、カープの二軍監督時代にオリックスの若手を見ていたでしょうし、何よりも選手へのアプローチが非常にうまい。選手に自信を持たせてグラウンドに送り出しているように感じます。特に若い選手のなかには、気持ちの在り方の部分がプレーに影響を及ぼす選手も多いだけに、そういう意味でも、育成のカープの伝統をオリックスで体現していると思いますね。梵コーチも若手のポテンシャルをうまく引き出しているように感じます。

 カープには、今季、一軍に定着した小園海斗や林晃汰をはじめ、活きのいい若手がたくさんいます。二軍で結果を残している選手も数多くいるので、いいタイミングでチャンスを与えながら、育てながら勝つ野球をみせていってくれることを期待したいですね。

 カープがチームとして秘めている力はまだまだこんなものではありません。選手の力をうまく活用しながら、後半戦、Aクラスに肉薄する戦いをみせていってもらいたいですね。