2年ぶりの通常開催となった今夏の全国高校野球選手権広島大会は、広島新庄が5年ぶり3度目の優勝で終えた。コロナ禍の影響を乗り越え、広島の高校球児たちはそれぞれの思いを持って夏の戦いを迎えていた。ここでは広島大会を盛り上げた3年生をクローズアップし、彼らの思いを聞いた。今回は、強豪・広陵の守りの要としてプレーしてきた三宅雄大(3年)に迫る。

広島大会屈指のショートとして、最後の夏を戦った広陵・三宅雄大選手。

◆強豪校の内野を引き締めたセンス溢れる守備力

 毎年のように広島大会の優勝候補に挙がる広陵で、1年時から内野の要としてプレーしてきた三宅雄大。決して体は大きくないが、センス溢れる守備とつなぎの打撃でチームを牽引してきた。

 「中学のとき甲子園で中村奨成選手の代が活躍される姿を見て、自分も甲子園で活躍することを夢見て入学しました」。2019年、1年生の頃から試合出場のチャンスをつかむと、秋にはベンチ入りを果たした。「技術はもちろんですが、体の大きさ、体力の違いで全然ついていけませんでした」と当時を振り返る。起用した中井哲之監督は「すごく上手だし、優しい丁寧な子ですよ。勉強も真面目で非の打ちどころがない」とレベルの高い選手が集結するチームの中で、早くから三宅に期待をかけてきた。

 三宅にとって忘れられない試合がある。2年生ながらベンチ入りして迎えた昨年の夏季広島大会、決勝戦で広島商業に敗れた一戦だ。

「自分は代打で出場させてもらったのですが、三振してしまいチャンスをつぶしてしまったんです……。すごく先輩たちに申し訳ない気持ちになりました。それでも先輩たちに『自分たちの代で頑張れよ』と声をかけていただけました。それ以来、絶対に自分たちの代で、夏は負けられないと思いました」

そんな悔しさを胸に、新チームで打っては2番として、守ってはショートとしてチームを牽引した。「新チームは1年生も多く入っているので、僕は背中で示していきたいと思いました。見本となる行動を寮生活でもグラウンドでも常に心がけるようになりました」。主力選手としての責任と自覚も芽生え、甲子園出場を見据えた厳しい練習を耐えてきた。

「絶対に広島大会を制して、甲子園で日本一をとる」。迎えた最後の夏、4回戦の高陽東戦で延長10回の末にまさかの敗退。夢見た甲子園でのプレーは叶わなかった。

「技術はもちろん、人間的にすごく成長させていただきました。礼儀、人として当たり前にできなければいけない事を鍛えてもらいました」と広陵野球部での2年半を振り返った三宅。全国屈指の強豪校で主力として過ごした経験は、これから先に彼が歩む人生で必ず生きるはずだ。