カープの未来を担う若手選手の声をお届けする蔵出しインタビュー企画。今回取り上げるのは、手術から復活し、4月24日の巨人戦で1031日ぶりに一軍勝利を飾った5年目の高橋昂也。9月4日のヤクルト戦では約4カ月ぶりに先発勝利をあげるなど、一軍の先発ローテ定着に向け前進を重ねている。今季の開幕直後、1031日ぶりの勝利をあげる前に行った独占インタビューから、若鯉左腕の言葉をお届けする。
(広島アスリートマガジン2021年5月号で行ったインタビューをもとに編集)

手術からの完全復活を目指す高橋昂也投手。

◆手術をきっかけに体のケアへの意識が高まった

―まず左肘の状態から伺います。一昨年に左肘を手術されましたが状態はいかがですか?

「順調に回復しています。手術をする前と後で野球に対する考え方も変わりましたし、手術をきっかけに成長できた部分も数多くあります。ピッチングにおいても、納得のいく投球ができるようになってきているのは大きいですね」

―野球に対する考え方については、どんな変化がありましたか?

「左肘をはじめとした体のケアに関して、人一倍やらないといけないと考えるようになりましたし、ケアやエクササイズの方法などについても、これまで以上に興味を持つようになりました。もう二度とケガはしたくないので、そこは強く意識して取り組むようになりました」

―手術後はテークバックを修正するなど、左肘にかかる負担を考慮して、投球フォームを変更されました。新しいフォームの手応えは感じていますか?

「そうですね。肘への負担を少なくし安定感のあるフォームを目指して取り組んでいくなかで今の投げ方にたどりつきました。感触としては、以前のフォームと比べて投げた後の負担が軽減されていますし、制球の面でも手応えを感じています。今年の3月、4月の試合で投げた時もしっかりと制球できていたので、新しいフォームをより良いものに進化させていきたいと思っています」

―フォーム変更をする際、参考にされた投手はいますか?

「誰を参考にしたというのはいないのですが、いろいろな情報をもとに、まずは自分の頭の中でこういうフォームで投げたいというイメージを描きました。あとは投げながら、当時三軍の投手コーチだった小林(幹英)コーチ(現二軍投手コーチ)にもアドバイスをいただきながらフォームをつくり上げていきました」

―昨秋のフェニックス・リーグでの活躍が評価され、春季キャンプは一軍スタートでした。どんなテーマを持ってキャンプに臨まれましたか?

「一番は球速を上げることを意識して取り組みました。あとはとにかく実戦形式の練習で結果を出すことにこだわってキャンプに入りました。結果的には、キャンプ序盤で(打球が当たる)アクシデントで離脱してしまいましたが、自分の納得のいく球はなかなか投げることができていませんでした。なので、キャンプの状態を踏まえて、少しフォームを見直しました。それが、3月以降の実戦での結果につながったのかなと思います」

―ウエスタン・リーグ開幕後は2試合連続で先発勝利。継続して結果が残っているだけに手応えもあるのでは?

「絶好調というわけでもないのですが、自分の納得のいく球を投げることができているのはいいことだと思っています。今の感触を忘れずに、投げ続けていきたいと思います」

―課題にされていた球速は、現段階では140km台前半が多いそうですが、この部分はどう捉えていますか?

「春季キャンプでは球速を意識して投げていましたが、シーズンが始まってからは、スピードはあまり気にしていません。周りからも「球速で抑える投手ではないよ」と言われたりもしますし、まずはコントロールを第一に考えています。ただ、もちろん現状の球速でいいとは思っていません。現状に満足してしまうと、どんどん落ちていってしまうと思うので、制球力を維持したうえで球速も上げていきたいと考えています」