フロー型チームがストック型チームに対抗するためには

 チーム編成を二つに分けるとすれば、一つは、巨人のように豊富な資金力で他球団の主力選手を獲得する『ストック型」だ。この型は能力の足し算でチーム力を上げていく。もう一つは、カープのように主力選手の流動性が高く、若手の育成が求められる『フロー型」だ。これは、川で大きな岩を動かすことで新たな流れができるように、引き算でチームの勢いをつくる型といえる。

ドラフト、FA、トレード、FAに伴う人的補償を考えれば、巨人にもフロー要因はあるし、カープにもストック要因はある。あくまでこれは“強度”と“スタイル”の違いなのだ。『ホームランでガツンと決める」のか『機動力で流れを制する」のか。今後の連載では、カープスタイルに呼応するストックとフローの戦略とはどういったものなのかを事例と共に考えてみたい。

 結論としては、カープの3連覇は、ストック型チームに、フロー型チームの戦略が対抗できた証だ。この通常の結論とは異なる、驚愕の解からのゴールシーク(逆算)が、この連載の主要なテーマである。今後の連載で触れていくことになるが、『フローのストック化」と『ストックのフロー化」、このパラドクス(逆説)が、この結果を解き明かすヒントになる。

 また長きにわたる低迷の要因として挙げられるような、主力選手が数多く流出していた時期を乗り越え、カープの選手独自の情緒的コミットメントを生み出した、カープのフィールドマネジメントについても、この連載で触れていくことになるだろう。

 會澤は冒頭の言葉に続いて、残留理由について以下のように語った。

「やっぱり、チームが好き、仲間が好き、チームメートが好き」

 「選手」と「ファン」と「チーム」のエンゲージメントによって、勝利のスパイラル・チェーンがさらに加速していくことで、カープの育成システムは一層揺るぎないものになるだろう。