一軍での活躍が期待されるカープ選手の2021年の声をお届けする蔵出しインタビュー企画。今回取り上げるのは、誰もが認める抜群の打撃センスを持つ西川龍馬。2021年の6月に行ったインタビューから、復調が待たれる野手のキーマンの言葉を抜粋してお届けする。(広島アスリートマガジン2021年7月号で行ったインタビューをもとに編集)

カープ・西川龍馬選手

◆ピンチを成長のきっかけにする。主力としての自覚が生んだ言動

 チームに衝撃が走ったのは5月17日。新型コロナウイルスのPCR検査で菊池涼介、小園海斗、正随優弥の3選手の陽性が判明。球団独自の判断で西川龍馬、松山竜平など5選手の登録も抹消した。その後、幸いにも西川に陽性判定が出ることはなかったが、鈴木誠也や長野久義、九里亜蓮や森下暢仁など、選手とコーチ・スタッフ含めて12人が、新型コロナウイルス陽性判定・濃厚接触者と判定され、一軍の主力選手がごっそりと抜ける緊急事態となった。公式戦も5月19日の巨人戦(東京ドーム)以降の5試合が中止。全体練習が再開されたのは、5月27日の西武戦(マツダスタジアム)当日だった。

 この試合で西川は4番・センターでスタメン出場。2回の第一打席で得点の口火を切る安打を放つと、3点を追う6回にも反撃の狼煙を上げる安打。いずれも先頭打者として攻撃のリズムを生む打撃をみせた。さらに7回には四球を奪い同点機を呼び込むなど、チームとして8日ぶりの試合で、2安打1四球2得点。結果は引き分けに終わったが、打線の中で背番号63の存在感が際立った。5月28日からのロッテとの3連戦(ZOZOマリン)でも4番として出場し3試合連続安打。6月2日の日本ハム戦(マツダスタジアム)では、試合の均衡を破るタイムリー二塁打を放つなど、レギュラー数人を欠いた戦いの中で、カープ野手陣の中心として活躍を続けた。

 チームが再始動した頃から西川の言動の変化を感じていた。報道を通じて、これまで以上に、チームを引っ張っていく力強い言葉を耳にするようになったからだ。チームを支えてきた選手が一軍を離れたことで、意識の変化が生まれたのかもしれない。そのことについて西川に聞くと「気持ちの変化はあります」と言葉が返ってきた。

「新型コロナウイルスの影響で主力選手が離脱したことで、チームを引っ張っていかないといけないという意識をこれまで以上に持つようになりました。野手でいくと、キク(菊池)さんも誠也もいないなかで、今いるメンバーでなんとか戦っていかないといけないし、中軸を打たせてもらっている以上、自分がしっかり結果を残さないとチームは勝てない。そういう気持ちで試合に臨んでいます」

 予期せぬアクシデントに見舞われた5月17日以降、チームも西川自身も結果が出ない苦しい日々が続いている。ただ、西川は前向きな気持ちを忘れずに現実を見据えている。

「外から見ていると心配のほうが大きいかもしれませんが、チームの雰囲気はそこまで悪くないと思っています。結果が出ない一番の要因は、投打の歯車が噛み合っていないこと。投手が抑えれば得点が奪えない。野手が打てば失点が増える。そこが噛み合うようになれば、必ず上位にいけると思っています。もちろんまだまだ全然諦めていません」