◆焦る気持ちを抑えて開幕へ標準。下半身主導の打撃が進化の鍵に  

 主力として成長を続ける西川だが、昨季はケガと闘った1年だった。2020年は開幕から3番打者として打線を引っ張っていたが、下半身のコンディション不良で8月下旬に戦線離脱。開幕前から違和感を感じていたという右足が悪化し、思うようなプレーができずにいた。10月に再度一軍に復帰し、プロ入り初の4番を任されるなどしたが、痛みは払拭できず、11月に右足の手術(右腓骨筋腱腱鞘形成術)に踏み切った。リハビリ期間の約2カ月、西川がバットを振ることはなかった。春季キャンプも二軍スタート。焦る気持ちを抑え、2021年の開幕にベストな状態で臨めることができるように調整を重ねた。

「リハビリ期間中はバッティングのことは考えていません。考えたらバットを振りたくなりますから。開幕に標準を合わせ、治すことを最優先に考えて取り組んできました。あと、手術をしたことで、これまで以上に体のケアに気を遣うようになりました。練習前や試合前に、より入念にウォーミングアップをするようになったので、そういう意味では野球に取り組む意識が変わったと思います」

 今季の開幕戦、西川は3番・センターでスタメン出場。その第一打席、最初のスイングで弾き返した打球はライトスタンドへ。本塁打からシーズンが始まる幸先の良いスタートを切った。

「今年から、体重を増やし下半身をより意識した打撃に取り組んでいます。バットに球が当たった時の飛距離や打球の強さが変わってきた感触はありますね」

 カープ入団当初から、西川には貫き通すと決めている思いがある。それは後悔しないために、情報の取捨選択の責任を自分自身で担うということだ。今シーズンの打撃の取り組みも、より高いレベルに適応するための覚悟の現れだ。

「周りからアドバイスをいただくこともありますが、良いと思ったものは取り入れて、自分に必要ないと思ったら勇気を持って捨てています。これだと決めたものだけを取り入れながらやっています」

 一軍には将来有望な若手が増えた。新戦力の台頭はチームが強くなっていく上で欠かせない要素となるが、上位に浮上するための絶対条件は、優勝経験があり、精神的にもチームを引っ張る主力選手の活躍だ。それだけに西川には、開幕から低空飛行を続けることが多かった打線を牽引し、勢いづかせることが期待されている。

「河田さんがヘッドコーチで帰ってこられ、足を使う攻撃が増えました。全てが成功するわけではないですが積極的に動くことは必要だと思います。相手チームにカープは何をしてくるか分からないと思わせることができたら得点機も広がってくると思っています」

 この先も試合はまだまだ続くだけに、歯車が噛み合えば、勢いに乗る可能性は十分にある。

「今季は、最後まで離脱することなく試合に出て、そのうえで結果も残さないといけないと思っています。ファンのみなさんに勝利を届けていけるように、最後まで諦めず、チーム全員で戦っていきたいです。自分はとにかく打つしかない。それだけです」

◆プロフィール
西川龍馬 63
■にしかわ・りょうま ■1994年12月10日生(26歳)■176cm/79kg   
■右投左打/外野手 ■大阪府出身 ■敦賀気比高-王子-広島(2015年ドラフト5位)