スポーツジャーナリストの二宮清純が、ホットなスポーツの話題やプロ野球レジェンドの歴史などを絡め、独特の切り口で今のカープを伝えていく「二宮清純の追球カープ」。広島アスリートマガジンアプリ内にて公開していたコラムをWEBサイト上でも公開スタート!

 9月16日現在、カープのチーム打率は2割6分でリーグトップ。にもかかわらず、総得点414(110試合)はリーグ5位。順位は最下位。ヒットを打っても得点に結びつかないのは、“一発”が足りないからである。

 スポニチが今年1月4日に配信した監督の佐々岡真司と大野豊の「新春対談」に、次のようなくだりがある。

<佐々岡 打線の軸なので、3番を任せられる打者がいれば、4番・誠也でいいと思います。ただ、新外国人のクロン。彼に4番を打つ雰囲気や実力があれば、3番に誠也でもいいかな…と。相手は嫌がるでしょうし。

 大野 助っ人次第で相当に厚みが出る。

 佐々岡 機動力は当然必要なんですが、長打力がある打者の重要性を昨季は痛感しましたから。クロンには期待しています>

 指揮官が期待したケビン・クロンがどうだったかについては、言及するだけ虚しくなる。指揮官は2年続けて「長打力がある打者の重要性」を痛感することになってしまった。昨季の失敗が生かされることはなかった、ということだ。

 開幕前、クロンに関するメジャーリーグのスカウティングレポートの一部を紹介した。「変化球への対応力に難あり」「外角低めへの逃げるボールのジャッジが不正確」。残念ながら、こうしたウイークポイントは日本でも改善できなかった。

 保険の意味も込め、来季は使える外国人打者を2人獲って欲しい。2人なら競争原理が働くし、相談し合うこともできる。ひとりに頼るのはリスクが大き過ぎる。同じ失敗を何度も繰り返してはならない。

(広島アスリートアプリにて2021年9月20日掲載)

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二宮清純(にのみや せいじゅん)
1960年、愛媛県生まれ。明治大学大学院博士前期課程修了。株式会社スポーツコミュニケーションズ代表取締役。広島大学特別招聘教授。ちゅうごく5県プロスポーツネットワーク 統括マネージャー。フリーのスポーツジャーナリストとしてオリンピック・パラリンピック、サッカーW杯、ラグビーW杯、メジャーリーグなど国内外で幅広い取材活動を展開。『広島カープ 最強のベストナイン』(光文社新書)などプロ野球に関する著書多数。ウェブマガジン「SPORTS COMMUNICATIONS」も主宰する。