カープの未来を担う若手選手の2021年の決意をお届けする蔵出しインタビュー企画。今回取り上げるのは、プロ4年目で飛躍を遂げつつある中村奨成。4月25日の巨人戦、カープファンが歓喜した一打の裏にあった“あるエピソード”を今年5月に行った独占インタビューから振り返る。
(広島アスリートマガジン2021年6月号で行ったインタビューをもとに編集)

プロ4年目で初安打・初本塁打・初打点を記録するなど、一軍で結果を残す中村奨成選手。

◆巨人戦での一打を後押しした選手会長・田中広輔の言葉

─プロでやっていけると手応えを感じた試合はありますか?

「一軍の試合にたくさん出ているわけではないので、それはまだないですね」

─では印象に残っている試合を教えてください。

「印象に残っているのは、チームの勝利に貢献できたという理由で、4月25日の巨人戦(東京ドーム)です。同点の最終回に代打で出させてもらい、二塁打を打つことができ、この一打が勝利に結びついたのはうれしかったですね。僕の中では、これまでのプロ野球人生の中で、一番大きな出来事でしたね」

─あの場面を振り返ると、代打で先頭打者として打席に入りました。2球で2ストライクと追い込まれながらも、球をしっかりと見極めて右方向へ二塁打。1点を争う緊迫した場面での一打だけに手応えもあったのではないですか?

「そうですね。昨年一軍に上げてもらった時は、追い込まれると簡単に三振してしまっていました。それを考えると、今年は打席で粘ることができているので、少しは成長したのかなと思います」

─勝敗に直結した一打だっただけに、試合後にチームメートからの祝福の言葉も多かったのではないかと思います。印象に残っている言葉はありますか?

「今でもハッキリと覚えているのは試合中の(田中)広輔さんの言葉です。代打で打席に入る前に『控えでヒーローになろう!』と言葉をかけてもらい、打席に向かいました。打席に入ると、何も考える余裕がないほど、とにかく必死でした(苦笑)。何とかしたいと無我夢中でバットを出して打った打球も、まさかフェンスまで飛ぶとは思っていませんでした。ただ、打席の前に、広輔さんの言葉に勇気を与えてもらったことはたしかです」

─今季から内野や外野に挑戦されています。捕手への思いもあるなか、どう気持ちを切り替えて日々の練習や試合に挑んでいるのでしょうか?

「今のチーム状況を考えると、捕手として試合に出場するのが難しいのは分かっています。そのなかで他のポジションをやらせてもらえるのは、試合に出るチャンスが増え、打撃や走塁でアピールできるので、そこは前向きに捉えてやっていきたいと思っています」

─持ち味の打撃ですが、試合出場を重ねるうちに、一軍投手の球に慣れてきたという感触はありますか?  

「それはまだまだないですね。一軍の打席に立つだけで必死なので。一軍で生き残っていくために結果を残さないといけない気持ちでいっぱいなので、感触や慣れまで考える余裕がないですね」

◆プロフィール
中村奨成 22
■なかむら・しょうせい ■1999年6月6日生(22歳)■181cm/81kg   
■右投右打/捕手 ■広島県出身 ■広陵高-広島(2017年ドラフト1位)