思わず心を奪われる!カープの話題をゆる~くまったりと展開してくれる“オギリマワールド”。関東出身ながら中学生からカープファン。独自のタッチで描かれるイラストを交えたコラムでおなじみのオギリマサホが、広島アスリートマガジンWEBで、新たなカープの魅力を切り取る。今回スポットを当てたのは、8月31日に千葉ロッテマリーンズ移籍が決まった、元カープの小窪哲也。カープ時代に応援歌の歌詞に使われていた「センター返し」の真実を、オギリマ視点でゆる~く取り上げる!

◆基本はセンター返しの小窪の打撃だが・・

 今シーズンの支配下登録期限である8月31日、吉報が飛び込んできた。昨年カープを自由契約となった小窪哲也の、千葉ロッテマリーンズ移籍が決定したのである。

 小窪は現役続行を希望し、今季は独立リーグ・九州アジアリーグの「火の国サラマンダーズ」でプレーを続けていた。その経緯は2017年に同じくカープを自由契約となった梵英心と重なるものもあり、何とか本人の希望が叶って欲しいと思っていたところだったので、殊更に嬉しく思えたのだ。

 ところで、今後の小窪のロッテでの活躍を祈るにあたり、解決しておかなければならない問題が一つある。それが「小窪哲也は“基本はセンター返し”というのは本当なのだろうか」ということである。

 カープ時代の小窪の応援歌は「鋭く引っ張って 華麗に流し打ち 基本はセンター返し それが小窪哲也」という歌詞であった。「目を閉じて何も見えず」という谷村新司の「昴」にも似た、事実を淡々と記述する系の歌詞だ。「鋭く引っ張って」(レフト方向)「華麗に流し打ち」(ライト方向)と、一応全方向へのヒットは示唆しているものの、やはり「基本はセンター返し」という一語が重く響く。

 カープ時代、小窪がセンター前ヒットを放てば、ファンも「やはり基本だからね」と納得したものである。しかし、本当に小窪は「センター返し」が多かったのだろうか。そこで、カープ在籍時(2008~2020年)の小窪の全打席におけるセンター返し率について調べてみた(※1)。

 小窪のカープ在籍時のヒット数は13年間で385である。その内訳を見ると、内野安打22(ピッチャー前2、セカンド前7、サード前3、ショート前10)、レフト方向133(17本塁打含む)、センター方向137(1本塁打含む)、ライト方向93となっている。

 またフライやゴロなど、アウトになった打球の方向についても見てみよう。レフト方向67(犠飛3含む)、センター方向108(犠飛2含む)、ライト方向121(犠飛4、失策1含む)となる。アウトになるような打球はライト方向へ飛んだ数が一番多いが、やはりヒットはセンター方向が一番多く、「基本はセンター返し」という歌詞の正しさが証明された訳だ。

 スッキリした気持ちで、ロッテのユニフォームに身を包んだ小窪の姿を見ていた9月9日。対オリックス戦で、小窪は入団後初安打となるホームランを放った。その弾道は、綺麗にレフト方向へ伸びていった。

 そう、「基本はセンター返し」の小窪なのだが、ホームランだけは圧倒的にレフト方向が多いのである(小窪のプロにおけるホームラン全19本のうち、レフト方向が18本、センター方向が1本)。カープ時代の2年連続代打満塁ホームラン(2015年・対ヤクルト、2016年・対DeNA)も、レフト方向に「鋭く引っ張った」当たりであった。

 早速ロッテのグッズショップで注文した、「移籍後初ホームラン記念Tシャツ」が届くのを楽しみにしながら、今後の小窪の「基本(ヒット)はセンター返し、でも鋭く引っ張るホームラン」を期待したい。

※注1:データはnf3参照

https://nf3.sakura.ne.jp/index.html

 

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オギリマサホ
1976年東京都出身。イラストレーターとして雑誌や書籍等の挿絵を手掛けるかたわら、2018年より文春オンライン「文春野球コラム」でカープ担当となり独自の視点のイラストコラムを発表。著書に『斜め下からカープ論』(文春文庫)がある。