今シーズンのプロ野球もセパ両リーグ共に優勝争いが佳境を迎えてきた。そんな中、カープはCS争いを繰り広げたものの、シーズン4位が確定した。

 カープは序盤から投打の歯車が噛み合わず、苦戦を強いられてきた。そんな中で先発投手陣に注目すると、プロ8年目の九里亜蓮はシーズンを通じてローテを守り初の二桁勝利を達成。シーズン途中に二軍落ちを経験した床田寛樹は、一軍復帰後に好投を連発し、9月度月間MVPを受賞した。

 苦しい戦いの中でも、来季へ向けて明るい材料となった2投手について、カープOBの大野豊氏の見解を聞いた。

今季、自身初の二桁勝利を記録した九里亜蓮。

◆自分が先発の柱だ! という意識を

 今季プロ8年目で初の二桁勝利を達成した九里亜蓮は、これまで使い勝手が良いというところで、先発、リリーフとさまざまなポジションをやってきました。

 「負けず嫌い」「気持ちの強さ」があって、大瀬良大地に対して良い意味でライバル意識を持っているんじゃないかと感じます。大瀬良がドラフト1位、九里が2位の同期入団の同学年として大瀬良の背中をずっと追いかけてきました。チーム内で、同期でライバルがいるということはとても良いことです。

 今季は開幕からローテを外れることなく戦い続ける中で、初の二桁勝利を達成しました。ですが、ここで満足せず、最多勝も争っているわけですから、“勝って当たり前の勝てる投手”として、“大瀬良、森下暢仁ではなく九里が柱なんだ!”となるように、来季以降も成長を続けてほしいですね。

 そういう意味では、来季はこれまでに経験のない2年連続二桁勝利に挑戦してもらいたい。これをクリアできれば、カープ投手陣の柱へグっと近づいていくはずです。

◆評価したい9月21日のプロ初完封

 その他の先発投手陣でいうと、床田寛樹が存在感を見せています。9月21日の巨人戦ではプロ初完封勝利をマークしました。8回まで115球を投げていただけに「9回は栗林良吏かな?」という雰囲気がある中で、床田は最終回もマウンドに上がりました。

 続投した先発投手が最終回に点を取られるというケースも多いので、ベンチとしても慎重にならざるを得ませんが、先発としてチャンスがあれば「今日の試合は自分に任せてください」というくらいの気持ちで投げ切る事も時には大事です。分業制が定着している現在の野球では、完投はそれほど多くありません。

 そんな状況であっても完封を経験するのは先発投手には必要だと思います。9回に小園海斗が失策してピンチを迎えてしまいましたが、この日は落ち着いていました。そういう部分も踏まえて見ていても、床田は一軍に復帰してからの投球内容が非常に良いです。

 あの日も最後まで150キロ近いストレートを投げていましたが、投げ方やフォームがしっかりしてきたということもあるでしょうし、強さ、タフさを身につけているように感じます。

 強いストレートを投げる中で変化球を活かすというピッチングができているので、この先、二桁10勝といわず、15勝、20勝とさらに高いところを目指してほしいですし、貯金ができる投手になってもらいたいです。

 今シーズン、カープ先発ローテで投げている左投手は高橋昂也や玉村昇悟と若手ばかりです。そういう意味でも床田は先輩として、良いお手本になっていかないといけません。チームの中で「手本になるのが床田さんだ」と言われるような左腕になってほしいです。