序盤から投打の歯車が噛み合わず、4位に終わった今シーズンのカープ。苦しい戦いが続いてしまったが、投打ともに若手選手が躍動したシーズンでもあった。

高卒3年目で初の規定打席に到達した小園海斗。

 野手に注目してみると、坂倉将吾が首位打者争いを演じる打撃力を発揮し、高卒3年目の小園海斗、林晃汰らもスタメンに名を連ね続けた。ここでは、カープOBでもある笘篠賢治氏に、今季カープのショート事情について語ってもらった。

◆トリプルスリーを期待できるポテンシャルの高さ

 多くの若手が躍動した今シーズンのカープですが、必死にアピールを続けてきた高卒3年目の小園海斗が9月25日のDeNA戦で自身初のシーズン規定打席に到達しました。

 彼はプロ1年目から一軍で40安打をマークするなど、並の高卒ルーキーとは違う部分を見せてくれましたが、2年目の昨季は、一軍でまったくアピールすることができませんでした。

 そういう悔しさもあったのでしょう、今年は2月のキャンプインから「アピールしてスタメンを取るんだ!」という強い気持ち、ブレない芯の強さを見せてくれているように思います。

 彼は上位打線を打つような〝切り込み隊長〟タイプだと思います。ただ現状の走塁面、特に盗塁においては物足りなさを感じます。小園自身が盗塁技術を磨くことはもちろんのこと、チームとしてもっと走りやすい環境をつくってやるべきではないかと思います。

 小園には、かつてカープのリードオフマンとして活躍した野村謙二郎が達成した〝3割30本30盗塁〟というトリプルスリーを達成できる選手を目指してほしいです。9月30日の阪神戦で打った決勝ホームランのような豪快な一発もありますし、守備面においても、ショートで日に日に良い動きを見せています。

 出だしの頃は無難に待って捕球することが多かったですが、打球に対して足を使って前に攻めながら、捕球ポイントに入っていけるようになったと思います。スタメンで出場することが増え、一軍レベルの打球の速さに慣れてきたのでしょう。

 一方で田中広輔は悔しい思いがあると思います。若手にチャンスを与えるという理由で田中の出場機会が減っているのは理解できますが、田中は選手会長としてチームのことを考え、自身が苦しい状況のなかでも嫌な態度を見せず、代走、代打、守備固めといった役目でチームに貢献してきました。

 性格的に派手なプレーをする選手ではありませんが、「俺をスタメンで使え」という強い気持ちだけは切らさないでもらいたいですね。ヤクルトの青木宣親がいい例です。スタメン機会が減っても、青木が元気に頑張っていることがチームを引っ張る力になっていますし、それがチーム力になるわけですからね。

 他球団を見渡したとき、目指す野球や戦い方がカープに一番近いのがヤクルトではないかと思うので、試合の中で参考になることは大いにあるはずです。それだけに今シーズンはヤクルトに6勝14敗と大きく負け越したことはカープにとっては辛いですよね。

 今季のヤクルトは試合巧者。勝負どころをきっちりと抑えて得点を奪うシーンをよく見ました。それだけ機動力野球が機能しているということでしょうね。