カープは育成4選手を含めて11選手を指名した。V奪回に向けて、来年の春季キャンプから新たな競争が始まる。

 10月11日に行われた今年のドラフトでカープは育成を含め11名の選手を指名。プロの世界に飛び込んでくる選手たちは、どんなプレーを持ち味にしているのか。アマチュア球界を長年取材し指名候補選手に詳しい安倍昌彦氏にカープが指名した11選手の特徴、期待される役割などを語ってもらった。

 今回はドラフト4巡目指名・田村俊介(愛工大名電高)の徹底解説をお届け。今季ブレイクした林晃汰に続く左のスラッガーとして期待のかかる田村の魅力を、安倍昌彦氏の視点で紹介する。

カープからドラフト4巡目指名を受けた愛工大名電高の田村俊介選手。

◆プロでも上位のスイングスピードを誇る大砲候補

「この春の練習初戦の相手が中京大中京高で、その第1打席の初球で畔柳(亨丞・日本ハム5位指名)から、あのライトの高いネットを越えるホームランですから」

 取材で伺ったグラウンドで、そんな話を倉野光生監督から教えていただいた目の前で、一塁のノックを受けていた田村俊介のフットワークとグラブさばきが実に鮮やかでした。

「セカンド、ショートはムリでも、サードなら……」とふと思い、試しにサードでノックを受けてもらったら、これが上手い。左投げの三塁手でもいけるのではないかという期待を持たせてくれました。

 田村のバッティング精度は知れわたっており、ストライクが来ない中でも、わずかな失投を逃さず、勝負強い打撃をみせるのが持ち味です。イライラしない、必要以上に力まない……野球的精神年齢の高さにも舌を巻きましたが、なによりも驚いたのは、初めて出場した今年の夏の甲子園。劣勢の終盤、全身をしなやかに連動させた美しいフルスイングから、右中間の一番深い所に放り込んだ雄大な放物線が、さらにまた美しく映りました。

 5月の計測で『164キロ』をマークしたスイングスピードはプロでも上位と聞くだけに左打ちの大砲候補としても期待できます。

●ドラフト4巡目:田村俊介(外野手・愛工大名電高)
たむら しゅんすけ/2003年8月25日(18歳)/左投左打/178cm・90kg

●解説:安倍昌彦
あべまさひこ/スポーツジャーナリスト。1955年4月24日、宮城県仙台市生まれ。早稲田大高等学院、早稲田大学野球部にて捕手を務めた。卒業後会社勤務ののち、野球雑誌『野球太郎』の立ち上げに参加。ドラフト候補選手たちの投球を実際にブルペンで受けた上で選手たちの状況を語る“流しのブルペンキャッチャー”としての活動は現在も継続中。各種webマガジンでドラフト候補選手たちにまつわる連載を担当している。