最終回となる今回は、 チームが成長する上での2つ目のポイント、「チームが機能するまでには時間を要する」ということについて説明します。

 

【チームが機能するまでには時間がかかる】

下の図は、 チームがどのように成長するかを表したものですが、チームとして機能し、最高のパフォーマンスを発揮するには時間が必要だということが分かります。

これまでにお伝えした通り「チームは異質協働体」であり、メンバーが一人ひとり異なることが強みです。

 

ただ、一人ひとり異なるので、例え同じスポーツをしてきたとしても、起きたことへの反応や考え方、捉え方など、対応は個々で異なります。
もし、それぞれの考えや価値観で判断、対応すればチームはバラバラになってしまい、互いに補い合い、協働するといった状況は起こりません。

前回のコラムでお伝えした違いによって発生する対立や対峙を通して、メンバー同士の相互理解を深めていき、チームとしてのコンセプトや目的に向け、それぞれが納得した方向性や価値観を見出していく時間が必要です。

さらに、チームとして上向きになり始めてからも機能するまでには時間はかかります。
上手く行きはじめたタイミングでは、まだチームとしてどう対応するかを一旦考えてから行動しているので、レスポンスがよくありません。
チームとして機能し最高のパフォーマンスを発揮するには、自分たちで見出したやり方について試行錯誤を繰り返し、微調整し、無意識で反応できるレベルに仕上げていくことが必要です。

時間がかかることに対して我慢しきれず、ついつい「ああしろ」「こうしろ」と命令をしてしまうと、一定のレベルには到達できるとは思いますが、チームが本来持っているパフォーマンスには到達できない可能性が高くなります。

練習や試合で起きたことについて「自分たちならこうすることもできるんじゃないか」「ここをこうしたらもっと良くなるかもしれない」とチームでふりかえり、微調整を繰り返すことによって、無意識で対応できるようになり、チームとしてのパフォーマンスを発揮、再現できるようになります。
チームとして機能するには時間がかかることを理解し、取り組んでいく必要があるのです。

【スポーツには成長の機会がある!】

先日、サンフレッチェ広島OBで現アンバサダーの森﨑浩司さんをお招きしたトークセッションを開催しました。
サッカーを通して学んだことについて多くの話を伺いましたが、最後に森﨑浩司さんから「選手である前に、ひとりの人間として成長すること」という言葉がありました。
ユース時代から「選手での時間よりも、引退してからのキャリアの方が長い」ということを先輩選手や指導者、クラブ関係者から伝えられ、サッカー選手としてレベルアップしていくことはもちろんのことですが、それと同時に、いやそれ以上に「人として成長すること」を意識されていたそうです。
実際、現役を引退した後にこのことの重要性を感じることが多く、それまでの経験があったからこそ、今の自分があると思っているとのことでした。
森﨑浩司さんのこのお話から、サンフレッチェ広島OBに優秀な指導者が多く生まれている背景には、こうした考え方、理念があったからに違いないと思いました。

スポーツでの経験は人としての成長につなげることができます。
これまでのコラムの内容は、スポーツの様々な場面で生かすことによってレベルアップを図ることもできると思います。
それ以上に、これまで触れてきた内容を基にして、経験を掘り下げることによって、スポーツでの経験をスポーツにとどめることなく様々な状況や分野に生かすことができるようになると思います。
スポーツを通して人生を豊かにしていく一助になったとしたら幸いです。

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【プロフィール】
門田卓史(もんでん たかし)
(株)edu-activators(エデュアクティベーターズ) 代表取締役
1975年広島生まれ、2016年より現職。アドベンチャー教育、体験教育を背景に、企業や大学、学校教育、スポーツなど幅広い分野に対し、チームビルディングや組織開発、人材育成、ファシリテーション研修などを提供。理論や経験に基づく知識を提供するだけでなく、体験・体感型のワークを通し、受講者自身の気づきから学びを促す納得度の高い参加型の研修を展開。スポーツ分野においては、日本サッカー協会A級ライセンス講習会、日本バスケットボール協会S級ライセンス講習会において講師を務めるほか、サンフレッチェ広島スクールが『人としての成長』を目的に開催されるキャンプの企画運営を担うなど、成長をテーマとした研修を提供している。

コラムVol.10