2005年から12年間をサンフレッチェで過ごし、数々のゴールとタイトル、あふれるクラブ愛でいまも多くの人々に愛されている佐藤寿人氏。共に紫のユニホームを着たチームメートがピッチ上で見せた才能、意外な素顔などを連載『エースの証言』で振り返っていく。

2000年から2007年までサンフレッチェでプレーした駒野友一

【駒野友一・前編】下半身の大きさと力強さ、キックの正確さに驚いた

 初めてコマに会ったのは1998年、僕が市原(現千葉)ユース、コマがサンフレッチェ広島ユースでプレーしていた高校2年生のとき。2001年のワールドユース(現U-20W杯)を目指すU-18日本代表がスタートする前の、ナショナルトレセンの合宿でした。

 そのときまで存在を知らなかったのですが、一緒にプレーをして、すぐにすごい選手だと感じました。最初のインパクトは〝お尻の強さ〟。身長は僕とそれほど変わらないのに(佐藤氏は170センチ、駒野選手は173センチ)、下半身の大きさと力強さに驚かされました。

 もう一つの驚きは〝キックの正確さ〟です。それを生かすクロスは、見ている場所、ボールのスピード、精度など全てにおいてレベルが高く、そのクロスに合わせる僕にとっても、それまで味わったことがないような新しい感覚でした。

 クラブが違うので、連係を深められるのは代表活動だけ。だからその後の活動では、ものすごく多くのことを要求しました。コマにとっても、あんなにたくさん要求する選手は僕くらいだったのではないでしょうか。良いクロスを蹴ることができるのは分かっていたので、きちんと意図を伝えて一緒にプレーすれば〝点が取れる〟という思いがあったんです。

 要求すれば、すぐにその通りのクロスを上げてくれるので面白かったです。僕は1人の力だけでゴールを決めるタイプのストライカーではないので、自分の考えと武器を、ラストパスを出してくれる味方の特徴とすり合わせて、ゴールシーンを生み出す作業が必要です。僕の21年間のプロキャリアで、それを最も早く形にしてくれたのがコマでした。

 2000年にどちらもトップチームに昇格してプロになってから、市原で広島と試合をした後に、僕とコマ、カズ(森﨑和幸)の3人で、そのまま代表の活動に行ったこともあります。最寄り駅で電車を待っていても、誰にも声を掛けられませんでした。僕たちは華やかな選手ではなかったですからね(笑)。(後編に続く)

◆駒野友一(こまの ゆういち)
1981年7月25日生、和歌山県出身。
サンフレッチェ広島/2000年〜2007年
2000年にユースから昇格し、2001年から主力として活躍。2001年ワールドユース、2004年アテネ五輪、2006年と2010年のW杯と、各年代の世界大会に出場した。2008年に磐田に完全移籍。FC東京、福岡を経て、今季もFC今治で現役を続けている。

◆佐藤寿人(さとう ひさと)
1982年3月12日生、埼玉県出身。2005年にサンフレッチェに移籍。3度のリーグ優勝に貢献し2012年にはMVPと得点王を獲得。2020年限りで現役引退。通算のJ1得点数は歴代2位。引退後は指導者・解説者として活動中。