プロ野球選手が「脂が乗った」時期になるのは、やはりアラサーから。中国の古典医学書『黄帝内経』では男性の肉体のピークは32歳と言われ、野球は経験がモノを言うスポーツでもある。優勝に向けた熾烈な戦い、ここぞの大一番でチームを支えてほしいアラサー世代の戦士たちにエールを贈る。

今季、8年目のシーズンを迎えた薮田和樹(今季の春季キャンプで撮影)

◆今こそカムバックのとき。リリーフ陣の救世主になれるか

(前編から続く)

 投手陣に目をむけると今年30歳を迎える薮田和樹が5月5日に一軍合流を果たした。2017年には先発としてブレイクを果たし、15勝3敗、防御率2.58の好成績を記録。最高勝率のタイトルを獲得したが、その後は不振に陥っていた。昨季は二軍戦でも防御率5点台と奮わなかったが、今季は、低めに力強い球を投げ込み復活の気配を漂わせている。

 二軍での調整が続く中田廉、一岡竜司も、もう一花咲かせたいアラサー組。彼らが本来の実力を発揮すれば、一気にリリーフ陣の不安は解消されるだろう。

 昨秋にトミー・ジョン手術を受けた岡田明丈も今年で29歳。キャンプ終盤からスローイングを再開しており、復帰が待ち遠しい。もし回復が早ければ、今季最終盤の秘密兵器になり得る存在だ。

 28歳のフランスアもアラサー組に仲間入り。2018年から3年連続でフル回転していたが、昨季は右ヒザを痛めて、わずか8試合の登板に終わった。手術明けの今季はすでに投球をしており、実戦復帰も近い見込みだ。

 投手陣を支えるという意味では、29歳・磯村嘉孝のキャッチャーワークにも注目したい。軽傷を負った會澤翼に代わって、5月上旬には2試合で先発マスクを被り、新外国人のアンダーソンを好リード。7回を被安打1の無失点に導き、初登板初勝利と勢い付けた。頼れる第三捕手として、自慢の守備力を見せていきたい。

 若さだけでは勝てない長いシーズン。チームの中堅を担うアラサー世代の踏ん張りがなければ、V奪還、そして悲願の日本一は見えてこない。若手のフレッシュな勢いにアラサー組の経験と粘り。この2つが組み合わさり、ベテランと呼ばれる、チームの根幹を担う選手たちの存在感が加わることで混セ制覇が見えてくる。プロ野球選手としてここまで生き残った実力者たち。アラサー世代の「本領発揮」に今一度期待したい。