秋山翔吾が加入し、後半戦に向けて陣容が固まってきたカープ。この時期のプロ野球界の風物詩といえば、駆け込みトレードだ。

 近年のカープはどちらかと言えばトレードに消極的な球団といえる。しかし、過去20年間を俯瞰して見ると、面白い試みもあった。改めて過去20年間のカープの選手同士のトレードを振り返ってみたい。

2019年に楽天からトレード移籍した三好匠

◆2005年1月

【IN】
山﨑浩司(内)
上村和裕(捕)
【OUT】
菊地原毅(投)
(→オリックス)

 近鉄と合併したばかりのオリックスとの積極的なトレード。左の中継ぎが不足していたオリックスに菊地原(当時29歳)を放出し、山﨑浩司(当時24歳)、上村和裕(当時21歳)の若手野手2人を獲得した。

 結果的に菊地原は移籍1年目から71試合に登板し、33ホールド、防御率1.38の好成績を残し、最優秀中継ぎ投手を受賞した。

 一方、山﨑浩司も移籍1年目は96試合に出場し、打率.255、31犠打としぶとく活躍。前年まで近鉄で一軍出場3試合ということを考えると、プチブレイクしたといってもいい出来だった。上村は一軍では活躍できなかったが、2014年まで二軍の捕手陣を支え、縁の下の力持ちになった。

◆2006年3月

【IN】
青木勇人(投)
【OUT】
福地寿樹(外)
(→西武)

 環境一変の中堅トレード。広島は過去2年で49試合の出場に留まっていた福地を放出。西武は2000~2002年にリリーフで活躍したものの過去3年、一軍で結果を残せていなかった青木勇人を放出した。

 新天地で福地はレギュラーの座を掴み、1年目から91試合で打率.289、25盗塁と大ブレイク。青木も2007年に43登板を果たして復調したが、西武の方がややお得なトレードになってしまった感は否めない。

◆2006年6月

【IN】
山田真介(外)
【OUT】
木村拓也(内・外)
(→巨人)

 ブラウン監督のもと、若返りが進められたチームで出番を失った当時34歳の木村拓也の救済トレード。木村は巨人でもユーティリティとして活躍し、改めて実力を証明。

 カープに加入した山田真介は移籍当時26歳。身体能力の高い外野手として期待されており、移籍後は18試合で打率.298、出塁率.353と資質を示したが、後述のトレードで1年を待たずに阪神に放出された。

◆2007年5月

【IN】
喜田剛(内・外)
【OUT】
山田真介(外)
(→阪神)

 ブラウン監督が目を付けていた喜田剛を獲得するためのトレード。喜田は一軍出場こそ少なかったが、ウエスタン・リーグのタイトル常連の「二軍の帝王」。野手層が厚かった阪神の温情トレードともいえる。

 喜田は代打を中心に同年67試合に出場。結果的にブレイクはならなかったが、一軍で出場機会を得た。一方の山田真介は赤星憲広の故障もあって即戦力になる可能性もあったが、一軍出場を果たせぬまま、2008年に引退した。

◆2007年11月

【IN】
岸本秀樹(投)
木村昇吾(内)
【OUT】
小山田保裕(投)
(→横浜)

 経験ある中継ぎを求める横浜に前年一軍3登板の小山田(当時31歳)を放出し、当時25歳の岸本、27歳の木村昇吾を獲得した若返りトレード。

 岸本は抜群の成績とまではいかなかったが、2008年には37登板、2010年には51登板と一軍ブルペンの一員となり、木村昇吾もユーティリティーとして芽を出した。

 一方、横浜に移籍した小山田は移籍1年目こそ39登板で防御率3.80と戦力になったが、2年目は7登板、3年目には右肩を痛めて引退。広島が得をする結果になった。

◆2008年7月

【IN】
牧野塁(投)
【OUT】
佐竹健太(投)
(→楽天)

 右の牧野、左の佐竹のリリーフ同士のトレード。牧野は2年間で20登板、佐竹は5年間で98登板。

◆2008年7月

【IN】
田中彰(内)
【OUT】
山﨑浩司(内)
(→オリックス)

 移籍2年目からなかなか結果を残せなかった山﨑浩司をオリックスに戻し、パンチ力が魅力の内野手・田中彰を獲得。山﨑はオリックスでユーティリティとして再び存在感を示したが、田中は一軍出場1試合のみに終わった。

◆2010年5月

【IN】
迎祐一郎(外)+金銭
【OUT】
喜田剛(内・外)
長谷川昌幸(投)
(→オリックス)

 2007年に二軍で三冠王を獲得した迎祐一郎の資質を買ってのトレード。結果的に三者ともに目立った成績は残せなかったが、迎はリーダーシップを評価され、現在は広島の一軍打撃コーチに。

◆2010年11月

【IN】
菊地原毅(投)
【OUT】
小島心二郎(投)
(→オリックス)

 菊地原のおかえりトレード。選手としての旬は過ぎていたが、コーチングスタッフの確保という意味では積極的なトレード。一方の小島はオリックスで一軍登板の機会はなく、2011年に引退。

◆2012年3月

【IN】
江草仁貴(投)
【OUT】
嶋重宣(外)
(→西武)

 福山出身の江草と埼玉出身の嶋の帰郷トレード。江草は1年目こそ26登板を果たしたが、その後はトミー・ジョン手術もあって一軍ではあまり投げられず。嶋も打撃復調とはならなかった。

◆2013年4月

【IN】
小野淳平(投)
【OUT】
青木高広(投)
(→巨人)

 2011年に76登板を果たしたものの、翌年のキャンプで左膝を負傷し、シーズンを棒に振った青木を巨人に放出。青木より6学年下で当時26歳の小野淳平を獲得した。

 小野は2013年に19登板、2014年に22登板とまずまずの稼働。ただ、青木も巨人で息を吹き返し、広島戦でも好投を見せた。

◆2018年7月

【IN】
曽根海成(内)
【OUT】
美間優槻(内)

 ユーティリティ同士のトレード。美間は2019年に引退したが、曽根はスーパーサブとして存在感を増している。

◆2018年11月

【IN】
菊池保則(投)
【OUT】
福井優也(投)

 中堅同士の環境変えトレード。菊池は移籍1年目から58登板を果たし、右の中継ぎとしてブレイク。福井も昨季は中継ぎに転向して19登板。今季も登板機会を得ている。

◆2019年7月

【IN】
三好匠(内)
【OUT】
下水流昂(外)

 戦力改変中の楽天からユーティリティの三好を獲得した好トレード。下水流も自慢のバットで生かし、要所で活躍したが昨季引退。二軍マネージャーとして広島に復帰している。