サンフレッチェ初のJ2降格に伴い、小野剛ヘッドコーチが監督に昇格。1年でのJ1復帰、3年目にJ1で優勝争いという“3カ年計画”を打ち出し、選手の補強、若手選手の積極起用などさまざまな改革に取り組んだ。今回は特別に選手ではなく、公言通り1年でのJ1復帰を成し遂げた小野監督のインタビューをお届けする。
(広島アスリートマガジン2004年4月号掲載)

小野監督は森﨑和幸、森崎浩司、駒野友一ら若い選手を積極的に起用。選手の補強も含め、大幅なクラブ刷新を図った。

─ 2004年のJリーグが開幕しました。今年1年、サンフレッチェはどのようにして戦っていくのでしょうか。
「目指す方向としては、一昨年J2に降格した時に掲げた『3年間でJ1の優勝争いができるチームにする』という目標の中でやっています。そのため昨年、絶対越えなければならなかったハードルが1年でのJ1復帰。そしてそれをクリアした今シーズンは、今のプレーに満足することなく、『一人ひとりのプレーの殻を破る』ことにチャレンジしなければならないと思っています。J1残留が目標ならば何も今の一人ひとりの限界を破らせなくてもいいんです。無理をさせないで持っている力の中で、『自分のできる事を最大限やりなさい』と言う方が勝ち星は拾えると思います。殻を破ろうとすることによってマイナス面が起きてくることも考えられますからね。例えばアグレッシブにボールを奪いにいけば、裏をとられて失点する可能性もありますし。しかしそこで尻込みしていたらこのチームの成長はない」

─ 殻を破る、ということは昨年からおっしゃっている「リバウンドメンタリティー」(=逆境を跳ね返す精神力)とも関係してきますか。
「チャレンジしていくには下地が絶対必要ですからね。例え逆境が訪れたとしてもそこから這い上がる強さを各選手がもっていなければいけません。そうでなければ私が要求した、より高いレベルの課題に応えられなかった時点で選手が潰れてしまって、結局はチームもダメになってしまいます。そういった意味では『リバウンドメンタリティー』をしっかり身につけることのできた昨年は、今年チャレンジをしていくために重要なシーズンだったと思います」

─ キャンプを通して、その『殻を破る』ということに対しての手応えはいかがですか。
「今は各選手、その部分を模索しているところです。簡単な事じゃないですからね。プロとしてここまでやってきて、自分の中で築き上げたものをみんな持っていますから。頭の中で描いている『自分はこういう選手だ』というものをたたき壊して、そこから何か新しいものを求めていかなければいけない。キャンプでもがいてファーストステージでもがいて。模索して落ち込んで、尻込みしたくなるかもしれないけれどもそこをまた乗り越えて。そういう過程はシーズンの中でも必要になってくると思います」