◆失速の原因となった打撃陣の不調

 今その手帳を見返すと、交流戦のときの気持ちがよみがえってくる。6月6日、ソフトバンクに2対17で大敗した10連敗目の試合で、僕はこのように書いている。「マツダスタジアムにきてくれたたくさんのお客さんに申し訳ない。心の底からそう思う」。その文章を読むと、当時本当に落ち込んでいた様子が思い出されてくる。

 この年の失速の原因は2010年から続く打撃陣の不調だった。統一球が導入されたせいもあるが、本当に打てない。2011年シーズンの完封負けはリーグワーストの22試合。投手陣はバリントン、サファテ、福井の加入により2011年から持ち直したが、得点の少なさは致命的だった。

 好調な打者がいないこともあり、毎試合のように打線を組み替えた。相手ピッチャーによってもオーダーは替えた。メディアには“左右病”と揶揄されたが、それがより一層顕著になったのがこの年だった。

 誤解してほしくないのだが、僕は本来はレギュラーを固定したいと思っている。レギュラーというのは1年間活躍しただけではダメで、特に僕と緒方の中では「3年間、コンスタントに活躍して初めてレギュラーと呼べる」という共通認識を持っていた。もちろん強いチームはレギュラーも決まっており、打順も固定されている。

 たとえばカープが強かった1996年は規定打席に到達した3割打者が5人もいた。西山秀二、江藤、(ルイス)ロペス、金本(知憲)、前田(智徳)が3割を超え、僕が.292。投手を除いた8人中6人が固定されていれば監督としては戦いやすいだろう。

 しかし、この年のカープにはそういう選手が出てこなかった。規定打席に到達したのは(栗原)健太、東出(輝裕)、丸(佳浩)の3人だけで、しかも全員3割に到達していない。固定できないのなら固定できないままでやるしかない。そこにバッティングコーチの意見も入って、バッターを右左と並べた方が相手ピッチャーは投げにくいのではないかと、いろんな策を試してみた。