ここ数年、世界の野球の中心に位置するのは大谷翔平だ。投手・野手分業の近代野球のセオリーを覆し、「二刀流」で歴史を塗り替えている。カープでも1992年、1996~1999年に在籍したフェリックス・ペルドモが投手と内野手の二刀流に挑戦していたことは有名だが、その後、後進は現れていない。
しかし、野球界全体で二刀流の流れは活気を帯びている。今季、中日では根尾昂が投手に再転向し、今年のドラフト1位候補と呼ばれている矢澤宏太(日本体育大)はバリバリの二刀流として注目を集めている。
本格的な二刀流挑戦はさておき、カープの野手陣にも投げられそうな「素材」は盛りだくさん。大差時の野手登板などで一度は見てみたい「元投手」を取り上げる。
◆堂林翔太
甲子園で鮮烈な活躍を見せたのは堂林翔太。中京大中京では「エースで4番」を務め、2009年春のセンバツでベスト8、同年夏の甲子園では全国制覇を成し遂げた。
当時、「ベースボールサイボーグ」の異名を冠していたとも言われている堂林だが、その起源はピッチング。球速こそ140キロ台前半と速球派ではなかったが、多彩な球種をコントロールよく投げ込む技巧派だった。
◆三好匠
投手として輝かしい実績を持っているのは三好匠。中学時代は北九州市立大谷中のエースとして3年夏に全中3位。同大会の初戦ではノーヒットノーランも記録。その年のKボール全国大会でも福岡選抜を優勝に導いている。
その後、九州国際大付でもエースに登り詰め、2011年春の甲子園では全5試合を一人で投げ抜き、準優勝を果たした。体力充実の大会前半の投球は特に鮮烈で、初戦の前橋育英戦では、9回11奪三振、続く日本文理戦でも9回12奪三振を記録。最速145キロ、縦横のスライダーのキレも鋭く、左打者にはチェンジアップが刺さる好右腕だった。
◆田村俊介
昨年のドラ4。野手としてプロ生活を始めた田村俊介だが、今からでも…と思ってしまうほどの二刀流素材。愛工大名電では1年時から投手兼内野手として活躍し、最速145キロ、スライダー、チェンジアップ、フォーク、カーブを備える本格派左腕だった。
◆松山竜平
カープ時代からの松山竜平を知るファンからは想像できないかもしれないが、松山も実は投手経験者。鹿屋中央ではエースと主砲を兼任し、最後の夏は初戦で種子島に敗れたが、11奪三振の好投を見せている。高校、大学と練習の虫としても知られ、当時は50メートル走6秒フラット。身体能力の高いプレーヤーだった。
◆中神拓都
中日・根尾と同学年の中神拓都も市岐阜商で遊撃手兼投手として名を馳せた元二刀流。最速147キロのストレートを備え、馬力は抜群。フォームがやや開き気味のクセはあったものの、緊急登板なら十分にこなしてくれそうだ。
その他、育成の木下元秀や二俣翔一も高校時代は140キロ超をマークした素材。やはりプロは「トップ中のトップ」の世界。ちなみに鈴木誠也や丸佳浩も高校時代は投手も務めていた。今は野手でも高校時代は投打で躍動した選手がゴロゴロいるものだ…!