◆堂林に残された時間は多くはない

　ただ、堂林に残された時間はもうそれほど多くない。僕が彼を抜擢したことでチーム内に敵も多いことだろう。だからこそ人一倍バットを振って、人一倍練習しないといけない―そんな言葉を監督を務めている間、常に堂林にはかけてきた。

　堂林はこのシーズン終了後、僕が現役時代につけていた背番号“７”を背負うことになるが、それについて深い意味はない。僕は背番号にはこだわりもないし、球団にも良い選手が出てきたら遠慮なく使ってくださいと言っていた。それで球団が堂林に“７”を勧めて、彼が受けたのだろう。

　背番号“７”ということで言えば、ドラフト直後の挨拶でその番号を希望していたというキク（菊池涼介）が入団したのもこの年だった。

　何を隠そうキクをほしいと言ったのは僕である。ドラフト候補者の中で誰が一番足が速いかを訊いたときにキクの名前が挙がり、実際に見てみたら確かにかなり速かったのだ。

　キクの第一印象は「こいつ、まだまだ野球を知らないな」というものだったが、キャンプに入るとガラッと変わった。彼にノックして球の捕り方を教えると、あっという間に教えたことができるようになった。

　もともと技術がなかったからヘンな癖もなく、おまけにスポンジのように吸収力が高い。「でもこういうヤツって翌日になると全部忘れちゃうんだよな……」と思っていたら、次の日になっても忘れていない。