広島のアカデミー出身の選手がまた一人、大ブレイクを遂げた。8月にJ1初ゴールを決めてから、次々と強烈な左足シュートが炸裂。幼い頃からサンフレッチェのサッカーに憧れ続けた川村拓夢は、ついに立った夢の舞台への切符をつかみとった。

 ここでは、2022年9月に収録した川村の独占インタビューをお届けする。

◆試合を重ねるごとに、川村拓夢の魅力が爆発中!

広島復帰後、J1初ゴールをあげた試合ではプレーヤー・オブ・ザ・マッチにも選ばれた。

―今シーズンはすでに5得点。9月3日の清水戦では、レッドカードで10人になりながらも交代で入った川村選手が2得点をあげチームを勝利に導きました。超ロングシュートも話題となりましたね。

「ドウグラス・ヴィエイラ選手からのパスを受けた時、前と横に相手選手もいなくて、ゴールを見たらそこも空いていたので、『誰もいないじゃん』と思ってシュートを打ちました。ユースの時も同じようなゴールを決めているし、自分としては大したゴールではないと思っています」

―SNSでゴールシーンの動画が切り取られるなど、注目を集めましたが。

「ありがたい気持ちもありますが、僕自身は、1得点目の方がいいゴールだったと思っています」

―1得点目は柏好文選手からのボールでしたね。

「自分がポケットに入ったときにボールを持っているのが柏選手だったので、絶対にパスを出してくるだろうと思いました。相手GKは見えていなかったのですが、自分を信じて感覚で打ちました。試合終盤は頭も体も疲れているので、相手にも隙が生まれやすい。その隙を見逃さずに決められているのが、今の結果につながっているのだと思います」

―9月21日のルヴァンカップ・福岡戦(○2︱3)でも2得点を決めました。

「荒木隼人選手がヘディングした時に、『このスペースにボールが落ちてきそうだな』という自分の嗅覚を信じて走ったんです。相手選手が空振って、GKがパンチングしようとしていましたが、自分の方が出だしが早かったのでうまくヘディングを決められました」

―2得点目は佐々木翔選手のパスから始まりましたね。  

「佐々木選手が縦パスを入れてくれたおかげでチームに一気にスイッチが入って、カウンターが決まりました。あのシーンも、そこにボールが落ちてくるだろうという嗅覚を信じて走りました。自分のゴール感覚というか、嗅覚には自信があります。ここに落ちてくるだろうなと思ったところに、本当に落ちてくる回数が多いんです。嗅覚に自信を持って、自分を信じて、走り続けたいと思います」

―点が取れるボランチと言われます。  

「試合に出る度に良くなっている感覚があるので、もっと試合に出たいという思いが強いです。ボランチは若手だと野津田岳人選手、松本泰志選手というライバルがいますが、野津田選手はボールをつなぐことに長けた選手。松本選手は3試合連続ゴールを決めているし、自分と似たタイプ。試合に出続けるためにも、結果にこだわっていきたいと思っています」

―(取材時の10月初旬)ここから、タイトルをかけた戦いが続きます。

「広島復帰1年目からこんな経験をさせてもらえることが光栄です。プレッシャーは全くなくて本当に楽しみ。これまでルヴァンカップは決勝で2回負けていますが、当時はテレビで見ていて本当に悔しかった。次は選手として借りを返すというか(笑)、タイトルを取って、クラブの歴史を新しくつくっていきたいと思っています」

―川村選手は元々サンフレッチェが大好きなサッカー少年だったんですよね。

「サンフレッチェの選手になることが一番の目標でした。佐藤寿人さんはヒーローでしたし、今は青山敏弘選手のような広島のバンディエラになることが目標です」

―サッカーは移籍のスポーツですが。

「昔、広島の生え抜きの選手が他チームに移籍したとき、サポーターとしてすごく寂しい思いをしたんです。自分は、サポーターにそんな思いをさせたくない。1日でも長くこのクラブでプレーしたいと思っています。先日、地元の小学校のサッカークラブの子たちをスタジアムに招待したのですが、そういう取り組みも続けていきたいと思っています」

川村拓夢(かわむら・たくむ)
1999年8月28日生、23歳/広島県出身
183cm・72kg/MF
広島Jrユース−広島ユース−広島−愛媛(レンタル)−広島(2022〜)
愛媛での武者修行を経て広島復帰。長身とリーチの長さを活かしたプレーが持ち味のボランチ。鹿島戦で上げたJ初ゴールでは、渾身のガッツポーズと涙のヒーローインタビューがサポーターの間で話題となった。

広島アスリートマガジン11月号は、新井貴浩新監督の軌跡を振り返る1冊! 広島を熱くする男が帰ってきた!新井貴浩新監督誕生 月刊誌でしか見ることのできないビジュアルも満載です。