◆4番として、勝つことが最も重要

─新井選手個人に目を向けると、今シーズンは開幕から常に4番として出場してきました。  

「大きなケガもなくここまで来たということは、いいことだと思います」

─4番というポジションについては、いかがですか。

「もちろん責任感というものはありますし、使命感を持ってやってきました。でも、今年はそこまで4番というものを意識しなくなりましたね」

─一昨年、昨年は意識していたんですか。

「やっぱり一昨年も昨年も意識はしていましたよ。(少し考えて)うん」

─意識しなくなったのは、どのような要因が挙げられますか。

「いい意味で慣れたんだと思います。また、少しずつ、本当に少しずつですけど、技術面にしてもその他のことにしても階段を上がっているという実感があります。そういうことが意識しなくなった要因だと思います」

─バッティングについては、いかかですか。ホームランも昨年より多いですし、打点も100打点に迫る勢いです。

「自分としては、まあまあじゃないですか。でもよく分からないですね。そういうことは僕が評価するのではなく、周りの専門家の人やファンの人が数字であれ記憶であれ、評価してくれるものですから。だから僕はあまり数字に関しては、ピンときていません。それに、やっぱり試合に勝つことが一番なんです。みんなで試合に勝って喜びを分かち合いたいという思いでやっていますからね。だから個人的な数字がどうのこうのというのは、思い浮かばないです」

─やはり勝つことが大事だし、自分が打ってチームを勝利に導くことが最も重要なこと。

 「そうですね。それが一番大事です」

─チームを勝利に導くという意味では今シーズン、9月11日の時点で打点は89です。よく評論家の方などがおっしゃるのは、『1、2番の出塁率があまり高くなかった中、これだけの成績を残せているのは素晴らしい』と。  「そういうふうに言って頂いているのはありがたいし、素直にうれしいですね」

─一昨年のホームラン王、そして昨年の100打点という積み重ねが、勝負強さにつながっているんですか。

「そうですね。これまでいろいろな経験をしてきました。その経験が活きていると思うし、また精神的にも技術的にも伸びてきていることがつながっているんだと思います。でも数字に関しては欲ですから、満足することはありません。どれだけホームランを打っても、どれだけ打点を挙げても、です。だから、もっともっと打ちたいという気持ちが常にありますね。それに、僕はいいときのことよりも悪いときのことの方をすぐに思い出します。『なんであのときあんなバッティングをしたんだろう』とか、『なんであの場面であの球を振らなかったんだろう』とか。そういうふうに反省してばかりです。そう言った意味でも、満足することは全然ありません」

─ここ最近で反省したことはありますか。  

「反省することがあり過ぎて、どれがどれだかわからないくらいです」

─勝負強さという部分で言えば、今年は得点圏にランナーがいるときなどは、バットを短く持ってこれまでとは違うバッティングをされているように思います。

「そうですね。チャンスの場面では、それまでよりもピッチャーが打たすまいと、四隅を狙って投げてくる訳です。だから追い込まれた状況になればなる程、今まで通り気持ちいいスイングをして打とうと思ってもなかなか打てません。だから、とにかくバットを短く持ってでも球に食らいついていくんだという気持ちが、自然とバットを短く持たせましたね。いつ頃からバットを短く持ち始めたかも、覚えていません」

─ホームランについてはいかがですか。 

「全然満足はしていません。もっと打ちたいですよ。でもその辺りは打球の角度とか、いろいろなことをもっともっと勉強していかなければいけないと思っています」

─今シーズンが始まる前、新聞に新井選手は『脱・金本宣言』をしてシーズンに臨むという記事が載っていましたが。

「『脱・金本』ということを、僕は言っていないんです。新聞記者の方がそういうふうに書いただけです。だから自分でも『脱・金本』というようなことは思っていません。金本さんは金本さんですから。もちろん後輩として可愛がってもらっていますし、先輩として4番としてすごく尊敬できる部分、勉強できる部分があります。だけどやっぱり自分は自分です。だからこれからは自分なりの4番像というものをつくっていかなければいけないと思っています」

─新井選手は今シーズン全試合に出場されています。

「どんな状況であってもグラウンドに立っていたいという思いがあるし、試合に出るということは最低限のことですからね。だからそれは大きな目標ではありません」

─腰が痛かったときもあったかもしれませんが、グラウンドに立つと関係ない。

「関係ありませんね。1年144試合は長丁場であって、暑いときもあれば寒いときもあります。みんな絶対にどこかしら痛いところがあってやっていますから」

─先月、黒田投手にインタビューをしたとき、「僕は1週間に1回しか投げないけど、野手のみんなは毎日試合に出ている。そういう姿を見ていると、自分が投げる試合は頑張らなければいけないという気持ちになる」と言われていました。そういう言葉を聞いて、いかがですか。

「そういうふうに言ってもらえると、励みになりますね。またそういう野球観というか、考え方ができる黒田さんは素晴らしいと思いますし、だからこそみんなから尊敬されるんですね」

─それではファンの方にメッセージをお願いします。

「今シーズンは例年にも増して沢山の方に球場に来てもらい、応援してもらいました。その中でこういう結果になってしまって、本当に申し訳ないと思っています。それが純粋な気持ちです」

─最後にどうしてもこのことについて伺わなければなりません。FA権のことについてなのですが……。

「今からどうなるのか、自分でも本当に分からないですね。どこで何がどうなるのか分からないですから。本当に、です」

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