◆4番打者は孤独なもの

 4番打者はいろいろな重圧がありますが、やはり経験した人にしか分からないものもあると思います。野球界ではよく『エースは孤独だ』と言われることがありますが、4番打者も孤独なものです。たくさんのもの、チームの勝ち負けを背負って毎日グラウンドに立たなければいけないですし、そういうポジションは一つしかないんです。逆に言えば、勝敗を背負わせてもらえるポジションであり、すごく大変ですけど、やり甲斐というのも同時に感じられるポジションだと思っています。

 僕はそう考えながら4番を経験してきましたが、やっぱり、みんなが困っているとき、チームの状態が良くないときに『チームを助ける一打を打ちたい』と思ってやってきました。

 基本的には、得点圏にランナーがいるときに打てる勝負強いバッターになりたいと思ってやってきましたが、一番大事に思っていたのはその内容です。チームも見ているファンも『ここで打ってくれ』と思っているとき、チームの負けが混んでいるとき、打線が打てていないとき、チームを救う一打を打ちたいと思って4番をやっていました。極端に言えば、みんなが打っているときに打てなくてもいいんです。『接戦のときに4番の一打で勝った』と言われる活躍をしたいと思っていましたね。

 今チームでは、(鈴木)誠也が4番を務めていますが、本当に素晴らしいと思います。彼の場合はまだまだ若いですけど、まず技術があります。僕が若い頃に4番を打っていたときと比べれば全然違います。加えて言うなら、この先、さらに成長できるポテンシャルも持っていると思います。

 誠也が4番としてさらに成長するためにこれから何が必要かといえば、経験だけでしょうね。4番というポジションで何年間か経験していけば、周りが評価してくれるものです。これから時間と年齢を重ねていきながら、まだまだいろんな経験をして、数字がしっかりついてくれば、自然と周囲が『カープの4番が鈴木誠也だ』と認めてくれるものです。周囲を納得させたときこそ、真の4番打者になったときでしょうね。プロ野球というのは周囲、ファンのみなさんからの評価で決まってくる部分もありますからね。

 4番を経験した立場として必要な条件を挙げるならば、まずはチャンスに打てる勝負強さは必須条件だと思います。そして真の4番となれば、『俺がチームを背負っている。だから俺がしっかりしないといけないんだ』と自分でチームを背負える、背負っていると自覚できるはずです。打つことは当然ですが精神的な部分でも、球場外でも、そう思えることが大事だと思います。4番って、それほど重いポジションなんですよね。黒田(博樹・元広島)さんだってそうじゃないですか、エースというものを背負ってきた方は、そういう雰囲気がオーラとして出ていると思うんです。チームの勝敗を背負えるメンタリティーを持った選手。それが4番でしょうね。

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