新井貴浩新監督のもと、新たなチーム人事が発表された。2015年に新井監督とともに広島に復帰し、チームを25年ぶりのリーグ優勝へと導いたOB・黒田博樹氏の球団アドバイザー就任である。

 1996年にドラフト2位(逆指名)で入団した黒田氏は、2008年にドジャースへ移籍すると、以降、2014年までMLBで活躍。2015年の広島復帰は、日本のみならず大リーグ関係者からも大きな注目を集めた。

 これまで広島アスリートマガジンでは、数々の黒田氏独占インタビューを掲載してきた。今回は、広島復帰1年目の2015年に収録したインタビュー(一部編集)を振り返り、黒田氏の野球観に改めて迫る。

 黒田氏が8年ぶりにカープに復帰した2015年、広島と全国が沸いた。復帰後、本誌初のインタビューでは、久々の日本球界や進化した自身の投球スタイルなど、さまざまな考えを語った。

8年ぶりに日本球界に復帰した黒田博樹。その存在が、カープ25年ぶりの優勝を大きく支えることとなる。

カープ復帰は新たなチャレンジ

— カープファンについてですが、公式戦初登板の日はものすごく大きな声援がありました。

黒田 それだけファンの人に迎えられてマウンドに上がるということは、本当に幸せなことだと自分でも思いました。実際そのマウンドに上がって、球場の雰囲気を味わうことができて、本当に帰ってきて良かったなと思いましたね。

— 黒田投手が思われていた想像以上の歓迎ぶりでしたか?

黒田 そうですね。自分では試合のときに限らず周りが思った以上の歓迎ぶりだったので、そういう意味では戸惑いがありました。

— 敵地でもカープファンが多く、8年前とは違った雰囲気を感じるのではないでしょうか?

黒田 やっぱり僕がいた頃とは球場の雰囲気も違いますし、カープファンの熱の入れようは全然違うと思います。一野球人として、それだけファンの人に応援されてグラウンドに立てるというのはすごく幸せなことだと思いますし、そういう部分ではやりがいもあるし、うれしいことですよね。

— 久しぶりに日本のバッターと公式戦で対戦してイメージが違う、変わったなと感じられることはありましたか?

黒田 もう8年も前なので、イメージというのもなくなりつつありました。なので僕のなかでは“新しい野球に対するチャレンジ”という気持ちでいたので、あまりイメージというのは自分のなかで持っていなかったですね。

— 一からのチャレンジという感じですか?

黒田 同じ野球なんですけどやっぱり一つひとつ挙げれば、自分のなかでの変化っていうのは絶対あるはずですし、それに一つひとつ自分でアジャストしていく作業をしていかないと、アメリカでやってきたことを日本でそのままやって結果が出るかというと、なかなか難しいものだと思います。

— 8年前までは完投が多くあったと思いますが、メジャーでは中4日で100球が目処というスタイルでした。改めて完投への意識はどのようにお考えですか?

黒田 当然調子が良くて、状態も良くて投げれると思えば完投したいなと思います。ただ、自分の気持ちだけでできるものでもないですし、あとはチームのなかでの判断というのは僕らではなく、監督、コーチがやることです。ただやれることというのは自分が任されたイニングを全力で抑えていく、その積み重ねだと思います。

— 6回3失点以下のクオリティースタートですが、帰国後の意識はいかがですか?

黒田 アメリカでは中4日、中5日で10連戦、20連戦があるなかでの、6回3失点でクオリティースタートいうものの価値があるものだと思うので、それをそのまま中6日で回っている日本で当てはめていいものか、僕にはちょっとわからないですね。それは同じローテーションでも全然役割は違うと思うので、それだけを評価の基準にするのは違うと感じます。

— 中6日の間隔で調整が続いています。

黒田 アメリカで7年間やってきたものが自然と体に染みついているものがあるので、間隔が空けばいいかといっても、プラスのことだけじゃなくてマイナスのこともあるかもしれません。当然間があけばそれだけ、実践間隔も鈍りますし中4日で回っている感覚で調整していれば2日間というのでまた変わってくる部分もあります。ただ体の年齢的な回復力を考えたら、アメリカにいたときよりは当然回復する時間が多いというのは良いことだと思います。

— 現在40歳になられましたが、やはり年々体力的にはキツくなってきていますか?

黒田 いや、もうずっとキツいですよ(苦笑)。マウンドに上がることは簡単なことではないですし、そこで結果を出し続けるというのも簡単なことではないと思うので。年齢のことは言われますけど、それも受け入れてやらないといけない部分は絶対あると思いますね。

— 若い選手が多いなかでプレーすることは刺激になりますか?

黒田 刺激は当然受けますが、年を取ったなとは思いますよね、そういうのを見ると(笑)。特に日本というのは上下関係がありますが、アメリカでは相手の年齢を考えながら話すことはありませんでした。そういう部分で自分の年齢をすごく感じることはありますね。

— 先発投手として一番こだわりを持たれている数字はなんですか?

黒田 当然勝ち星というのは勝てるに越したことはないですし、勝てるピッチャーというのは周りからそういう風にみられるものだと思います。僕自身、通算3000イニングを日米で投げてきて、それはケガをしないで毎年コンスタントに投げていかないとできない数字だと思います。振り返ったなかで疲れてどうしても投げられないという時期も乗り越えながら、毎年なんとか投げてきた積み重ねが数になってきていると思います。現時点で振りかえってどうかというのはないですけど、自分が野球を辞めたときにその数字をみて、何か感じるものがあるでしょうね。

広島アスリートマガジン11月号は、新井貴浩新監督の軌跡を振り返る1冊! 広島を熱くする男が帰ってきた!新井貴浩新監督誕生 月刊誌でしか見ることのできないビジュアルも満載です。