新井貴浩監督が就任して約2か月。14年ぶりにユニホームデザインも一新され、新コーチ陣の発表、ドラフト会議、秋季キャンプなど、来季に向けて動き出した新生カープ。ここでは新監督への期待、そしてキャンプの展望などを、カープOBである大野豊氏に語ってもらった。

(本文中のデータは全て11月8日の取材時点)

写真は球団施設で就任会見を行う新井良太コーチ

◆「親しき仲にも礼儀あり」監督就任後も変えてはならないもの、変えなければいけないもの

 新井貴浩監督の就任が発表され、来シーズンのカープへ期待が高まっているファンも多いのではないかと思います。新井監督は以前から監督就任の噂があるOBの1人でした。45歳と若く、コーチ経験もない監督ではありますが、しっかりとチームをまとめてくれるのではないかという期待が非常に大きい人物でもあります。

 就任会見でも、言葉を選びながらも、若々しいイメージのコメントが非常に多かったと思いますし、言うべきことははっきり伝えながらも、ユーモアや笑顔もまじえた非常に爽やかな会見ではなかったかと思います。

 振り返ってみれば、新井監督自身はドラフトでも下位指名でした。そこからカープで鍛えられ、叩き上げられた選手でもあります。秋季キャンプ、そして来春のキャンプがどのような内容の練習になるのかはまだわかりませんが、自分自身の経験も踏まえて、キャンプのあり方の大切さもよく知っている監督ですから、楽しみにしたいと思います。

 また、監督としては、チームのさまざまな課題も克服していかなければなりません。実績あるベテラン選手の強化も求められますが、当然、若手の育成も求められます。コーチ経験のない監督就任では、その点を不安視する声は上がってくるものですが、だからこそ、周りで支えるコーチ陣の存在が重要になります。

 そのために招聘されたのが、藤井彰人ヘッドコーチでしょう。新井監督は阪神時代にともにプレーし、藤井コーチの人間性や野球観を見て、ヘッドとして呼び入れたわけです。その他のコーチ人事でも、現役時代から親交の深い石原慶幸を一軍バッテリーコーチとして招聘しました。

 また、福地寿樹、実弟の新井良太らも入団しています。新井監督の考えを理解し、協力してくれる人たちを呼び寄せたわけですから、そのコーチたちと協力しながらチームづくりをしていってほしいと思います。

 チームには、新井監督が現役時代にともにプレーをした選手が複数在籍しています。ただ「親しき中にも礼儀あり」ではありませんが、やはり選手、監督としてお互いに線引きをすることも必要になるでしょう。

 「監督になったから急に接し方が変わった」というのもよくないでしょうし、とはいえ、変わらなければいけない部分も必ずあります。新井監督の「良いところをどんどん褒めてその気にさせる」というスタイルは変えることなく、選手をその気にさせて伸ばしていくことを期待したいですね。

 これまで出場する機会があまりなかった選手にとっては、監督が変わったことを、良い意味でモチベーションにしてほしいと思います。全員にチャンスがあるということですし、監督もそういう気持ちで入るでしょうが、選手もその点をしっかりと把握して、これからの練習に取り組んでいくことが必要だと思います。

 新井監督は確かに目立つ監督ですが、やはり目立つのは、選手でなければなりません。最終的には目立つ選手をいかにつくり上げていくかが、監督の一つの使命なのだと思います。

 監督には、「新井カープはこういう方向性で戦うんだ」という“新井監督ならでは”の色をしっかりとして出してくれることを期待したいです。監督というのは誰がなっても大変な仕事ではありますが、それだけの期待をされての就任だと思いますから、チームをしっかり底上げし、新井監督らしく、常勝チームをつくりあげてくれることを期待したいと思います。

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