◆好事魔多し、交流戦で大型連敗

 彼はもともと三振かホームランか、という極端なタイプのバッターだが、ここまで打率が上がったのはキャンプから打ち方を変えたことに起因している。彼は無神経なところと神経質なところの両方が同居する性格なので、僕は状況に合わせて「三振を怖がっちゃダメだ」「振りすぎたらダメだ」「責任なんか感じなくていいぞ」と積極的に声をかけた。

 一番口を酸っぱくして言ったのは「ゆっくりタイミングをとるようにしよう」ということだった。春先の快進撃は、キャンプ中に取り組んだそんなやりとりが実を結んだ結果だと思う。一度彼に「今年急に良くなったのはどうしてだ? 俺のおかげか?」と訊いたら、「それもあるね」と冗談で応えてくれた。

 本当のところは、序盤に良いスタートが切れたことで気持ち的に乗って行けたところが大きいだろう。前半だけで試合を決定づけるホームランを何発打ってくれたのかわからないほど、彼の活躍はチームを牽引してくれた。

 春の戦いを見て「物怖じしないチームになってきたな」と喜んでいたが、もちろんそんなにスムーズに物事は進まない。「野球ってどんなに勢いがあっても、簡単に悪い連鎖に入るんだよな……」と感じ始めた矢先に交流戦突入。そして不安通り2014年シーズンも交流戦で9連敗(6月3~14日)という大型連敗をしてしまった。

 ただ、ポジティブに考えると9連敗をしてもまだ貯金が残っていた。9連敗直後には、6連勝。交流戦の悪癖がまたも顔を出したが、その後の盛り返しに関してはチームを評価していいと思う。ある意味、ちょうどいいタイミングかもしれないと思ったのだ。