カープ・新井貴浩新監督が就任して約2カ月が経過した。ドラフト会議では期待の高卒右腕に加え、社会人の即戦力投手の獲得に成功。秋季キャンプでは、新井監督自ら投手たちにも積極的に声をかける姿もあり、来シーズンに向けてチームは動きはじめている。

 2022年秋季キャンプ視察を終えたOB・大野氏が、新生カープの印象を独自の視点で解説する

(本文中のデータは全て12月8日の取材時点)

来季、プロ7年目を迎える矢崎拓也。8回の男としての活躍も期待される。

◆オフの期間で “自分に負けない強さ” をつくり上げてほしい

 少し前のお話にはなりますが、10月に新井監督初のドラフト会議が行われました。終わってみると、支配下の上位2人は高校生(ドラフト1位/斉藤優汰・苫小牧中央高、ドラフト2位/内田湘大・利根商業高)で、将来性を見越しての指名だったのではないかと感じました。また、即戦力となりうる選手として、3位の益田武尚(東京ガス)、5位の河野佳(大阪ガス)、6位の長谷部銀次(トヨタ自動車)を指名したという点では、投手陣の強化も考えての指名だったと言えるでしょう。全体的に見て、非常に良いドラフトだったのではないかと思います。

 11月には秋季キャンプが開催され、私も18〜20日に視察に行ってきました。残念ながら雨が多かったのですが、ブルペンでは玉村昇悟、遠藤淳志、高橋昂也、ケムナ誠の投球を見ることができ、紅白戦も見ることができました。

 そんな中、私が特に注目したのは、来季プロ7年目を迎える矢崎拓也です。考え方が『大人になった』という印象がありますし、ダメな部分から逃げるのではなく、しっかりと受け入れ、どう対応していくかを考えられるようになっているのではないでしょうか。課題の一つである『制球力』も、今季を見る限り改善されています。彼は三振を取れる力強いピッチングができる投手ですし、ケガがないというのも強みですから、来季も引き続き期待していきたいですね。紅白戦に登板した森翔平も、安定感抜群の投球を見せていました。森は緩急の使い方も上手いですし、球のキレもあります。自信を持って投げ切れる雰囲気も感じられましたから、彼もまた、非常に楽しみな選手であることは間違いありません。

 キャンプでは、新井監督もブルペンに入って直接投手に指導をしていました。選手の立場とすると、監督から声をかけられるとやはりうれしいものです。新井監督は冗談も言いつつ笑顔でコミュニケーションをしていくタイプですから、選手も心を開きやすいですよね。監督自らが野手目線のアドバイスをしてくれれば、選手としても頭に入ってきやすくなると思います。キャンプの雰囲気も、より一層明るく元気になってきたという印象がありました。選手1人ひとりが課題を見つけ、修正し、成長してさらに強くなるという循環ができやすい環境になりつつある印象です。監督が変わるということは選手にとってはチャンスですが、一方で、これまで起用されていた選手にとっては、安心できなくなる部分もあります。誰が監督になろうと、自分の力を発揮して結果を出し『監督に認めてもらうんだ』と考えて取り組むことが重要ですし、実際に選手たちも、そういう思いで日々取り組んでいるのだと思います。

 時代とともに、選手のオフの過ごし方も微妙に変わってきています。ただ、いつの時代もオフというのは、自分の課題を反省しつつ、来季に向けてどう向き合っていくかを冷静に考えられる時期だとも思います。しっかりと体をケアしつつ、自分自身と向き合いながら良い準備をして、来季に向けた自主トレ、キャンプに臨んで欲しいですね。

 来季はチーム内での争いも、ますます激しくなっていくでしょう。競争が激しくなるほど、投手陣の質も上がっていくはずです。相手に負けないことはもちろん大切ですが、まずは自分に負けない強さと、自分自身を信じる気持ちをしっかりとこのオフでつくりあげて欲しいと思います。

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