新井監督1年目となる今季、新監督の誕生と共にカープファンを驚かせたのが、黒田博樹氏球団アドバイザー就任のニュースだ。2016年限りでユニホームを脱いだ黒田氏は、ドジャース、ヤンキースとメジャーリーグの第一線で活躍し、日米通算200勝を達成したレジェンド投手でもある。
カープからメジャーへと羽ばたいた選手はこれまでに4人。ここでは、海を渡り活躍した選手たちの過去インタビューを再編集して紹介する。今回は、2015年終盤戦で抜群の勝負強さを見せつけ、エースとして活躍した前田健太(現・ツインズ)のインタビューをお届けする。
(掲載は2015年12月号)
◆前年の悔しさをぶつけた終盤
— 2015年は夏場以降、勝負強さを発揮された印象があります。
「昨季大事なところで勝てなかったのは自分でも分かっていたので、同じ失敗はできないという気持ちがあり、責任を感じていました。それだけに今季はチームがしんどい時期に勝たなければならないと思って投げていました。それが結果につながったと思います」
— 昨季から、調整法に変化を加えたのでしょうか?
「調整は変えていません。体の状態だけで見ると、昨季の後半戦の方が良かったかもしれません。本当に強い気持ちと、気負い過ぎないことだと思います。昨季に失敗したのは大事な場面で気持ちを入れ過ぎて投げていたことです。逆に今季は大事な試合でも、そのなかでいつも通りのペース配分を考えて投げることを心がけていました。それに加えて、悔しさをバネにできたことだと思います」
— 15勝目をマークされた登板(2015年10月2日、中日戦・マツダスタジアム)では、久々の一発もありました。
「あの試合はチームが負けられない状況でプレッシャーがありました。あとはジョンソン、晋太郎(藤浪・阪神)と最多勝を争っていたので、とにかく勝たないと獲れないという思いを持って投げていました。久々にホームランを打てたのは純粋にうれしかったですね。勝ち星よりホームランの方がうれしかったぐらいです(笑)。久しぶりに打ったので、いつもの勝ちよりも少し興奮していましたね」
— そして最終戦ですが、昨季最終戦の悔しさというのがバネとなっていたのでしょうか?
「当然それはありました。終盤雨で試合が流れなかったら最終戦の登板は回ってこなかったし、10月4日の甲子園の結果によってという部分もあり、登板日も決まっていませんでした。結果、甲子園でチームが勝って、監督、コーチから『最後はお前に任せたい』と言ってもらえたマウンドだったので、いつもよりプレッシャーもありましたし、責任感もありました」
— 3位がかかる一戦だけに、気合を感じさせる熱投でした。
「正直、中4日でしんどい部分もありましたが、監督、コーチの言葉に背中を押されましたし、それだけ信頼してもらっていると思うと気持ちが入りました。1年前の最終戦のように最初から飛ばさないで、いつも通りに試合に入って徐々に気持ちを入れることができて、良い状態で投げることができました。昨季の最終戦は僕が打たれて負けたので、これも2年連続最終戦で打たれて負けられないという気持ちがありました」
— 試合後、大瀬良大地投手に声をかけるシーンが印象的でした。
「結果的に大地(大瀬良)が打たれて負けましたが、大地ひとりの責任ではないですしチーム全体の負けだと思います。大地は自分ひとりの責任だと思って泣いていたと思います。なので『大地の責任じゃない』と声をかけました。1年前の僕の姿と気持ちと重なりましたし、気持ちも分かります。大地の気持ちが分かるのは僕だけかなと思って声をかけました」
— 今季は結果的に、二度目の最多勝を獲得されました。勝ち星は意識する数字なのですか?
「勝ち星と防御率は意識しますね。防御率のタイトルはチームメートのジョンソンと争いましたが、チーム内で争えるのは良いことですし、2人で良く話もしていたので一緒に獲れたらいいなと思っていました」
— そして二度目の沢村賞も受賞されました。やはり特別な感情があるのではないですか?
「沢村賞は僕のなかで特別な賞なのでうれしいですね。もっと数字的に良い形で受賞できれば良かったというのはあります。ただ二度受賞するのは難しいと聞いていたのでその分うれしいですし、 価値があることだと感じています」