2016〜2018年のリーグ三連覇を成し遂げたカープ。その勝因の一つに、選手層の厚みがある。二軍で鍛錬を続ける若手が一軍選手のレギュラーの座を脅かす。

 そんな好循環を築き上げた二・三軍首脳陣の2017年当時のインタビューから、伸びる選手の条件若手の育成方法を紐解いていこう。(2017年7月号 広島アスリートマガジンより)

2016年に入団した西川龍馬も、プロ1年目はシーズンの半分を二軍で送っていた。

◆自分で考えた意見をコーチにぶつける(森笠 繁)

 二軍で実力をつけて、一軍で成績を残している野手に共通していることは『自分なりにこだわりをもって練習に取り組んでいる』、『負けず嫌いな部分がある』という所です。

 そういう性格や特性を持っている選手は、結果的にコーチからの指導に加えて自分で考えて練習に取り組むようになります。例えば前日に私から打撃について指導すると、次の日に「指導してもらった後に自分なりに考えて、こういう練習をしてみたのですがどうでしょうか?」といったように積極的に意見を求めてきます。

 そういう積み重ねを何日もしていくことが、野球選手としての実力をつける近道だと思いますし、他の選手と差をつける一番の要因になってくるのだと感じますね。

【森笠 繁の指導哲学】とにかくコミュニケーションをとる

 選手に対して打撃の技術をただ教えるだけではなく、相手が自分の指導を受けてどう感じたか、という部分を重視しています。やらされる練習よりも、自分がしっかりと理解して納得して練習に取り組むことで、選手の実力が伸びるスピードが上がると思っています。

長年カープ二軍で若手指導を行ってきた森笠コーチ。

●森笠 繁

もりかさしげる●1976年10月4日生、神奈川県出身。98年ドラフト4位でカープに入団。08年オフに横浜へトレード移籍。10年限りで現役を引退し、11年から三軍野手コーチとして広島に復帰。12年からは二軍打撃コーチとして菊池涼介や鈴木誠也の新人時代から一軍デビューまでを見守ってきた。2023年からソフトバンク4軍コーチに就任。

◆他人からの意見に素直に耳を傾ける(浅井 樹)

 基本的に投手を見る事が多い私ですが、やはり伸びる選手に共通していると感じるのは、好奇心を持っていろいろな事に興味を持っているという事です。

 またコーチやトレーナーを含め、指導をしてくれる人物からの言葉に対して、素直に耳を傾ける選手は実力をつけています。

 自分が違うと思った意見を切り捨てる事は簡単ですが、私たちが指導するのはまだ若い選手が多いです。そういう選手たちにはまず他人から指摘された点や、意見を大事にしてほしいと思います。

 他人からの意見を素直に聞き入れる事も一つの能力だと思いますしね。また若いうちにしっかりと“努力を続ける”という事の大切さを理解した選手は、そこから必ず伸びてくると思います。

【浅井 樹の指導哲学】楽しませながら指導する

 三軍は、故障者や若手選手が在籍する場所です。必然的に基礎的な運動、つまり選手たちからすればあまり面白くない練習になりがちです。私も元選手ですのでその感覚が分かるだけに、少しでも練習に楽しみを感じる雰囲気づくりを意識して行っています。

2007年〜2019年までカープでコーチを務めた浅井氏。

浅井 樹

あさいいつき●1971年12月14日生、富山県出身。89年ドラフト6位でカープに入団。06年の現役引退まで勝負強い打撃でチームに貢献。07年からは二軍の打撃コーチ、10年〜12年は一軍打撃コーチを務めた。13年からは三軍統括コーチに就任し、故障者や高卒ルーキーたちを中心に指導。2019年まで若手育成に尽力した。

広島アスリートマガジン3月号は、WBC特集!『照準は世界一。栗林良吏、いざWBCへ!』。日本代表の一員としてWBCに出場する栗林選手インタビューをはじめ、世界の強豪国と戦ってきた石原慶幸コーチ、川﨑宗則選手のインタビューにもご注目ください!