いよいよ始まったサンフレッチェ広島の2023年シーズン。開幕ホーム2戦では勝ち星を手にすることができなかったが、随所で見せた全員でアグレッシブにゴールを奪いにいくスタイルは昨年から変わらずサポーターを魅了している。

 今回は、サンフレッチェ広島OB・吉田安孝氏が、開幕直前に行われたキャンプを視察して感じた、新シーズンの広島への期待を語った。

(取材は2月8日に実施)

森﨑和幸CRMが現役時代に背負った背番号『8』を継承した川村拓夢。

チームの勝利のために、自分の武器を最大限発揮する

 期待が高まるのは、新加入の戦力だけではありません。キャンプでは、青山敏弘らベテラン選手も、「さすが」と感じるプレーを随所で見せてくれました。青山自身、「若い選手たちの勢いがあるから、僕も乗せられて取り組めるんです」と話してくれましたが、本人にもまだまだ負けていられないという思いがあるのでしょう。メディカルスタッフの力も借りながら、良い状態を保って取り組めているようでした。ハードなキャンプが続く中でも離脱することなく、良いプレーを見せ続けてくれるベテランたちの姿を見ていると、非常に頼もしさを感じますね。

 トレーニングマッチでは、選手1人ひとりが「自分の得意なプレーをするように」という指示を受けていたと聞きました。自分の得意なプレーとはつまり、自分の『武器』を活かしたプレーです。足が速い選手であればピッチを走り回り、運動量のある選手であれば常に動き回る……。結果だけにこだわるのではなく、それぞれが持つストロングポイントを思い切り発揮することができていたのも、今年のキャンプの素晴らしい点だったのではないかと思います。例えばFCソウル戦では、川村拓夢がシャドーのポジションで出場していました。では、シャドーのポジションで活かすことのできる川村の『武器』は何かとなると、やはり裏へ抜け出す動きであったり、ゴールに絡んでいくプレーといった部分です。実際に川村は武器を活かして何度もチャンスを生み出し、得点も決めていました。チームに貢献するためにはどうすれば良いのかを、常に考え続けること。監督が選手に求める、「勝利のために、自分の武器を活かす方法を自ら考える」という姿勢は、まさにサッカーというスポーツの原点なのではないかと感じました。シーズンを通して、全選手が常に良いコンディションを保てるというわけではありません。疲れが出た時、連戦が続いた時、そんな時にどう対応していくかを計算しながら、開幕戦に向けてメリハリのあるキャンプをこなしてきたサンフレッチェ。全ての選手が良いトレーニングを積むことができていたのではないかと感じました。

 今シーズンは昨シーズン以上に、他クラブからのマークがいっそう厳しくなることが予想されます。周囲が自分たちを研究してくる中で戦っていくのは非常に難しいことですし、昨年とまったく同じことをしていては、昨年以上の成績を収めることは難しくなると考えられます。さらに上位を目指すためには 『変化』が重要になる中で、スキッベ監督としても、クラブとしても、4バックをオプションとして試してみたり、新選手を獲得して新しい血を加えるなど、「昨年とは違ったサッカーにするんだ」という思いを持って迎えるシーズンになるでしょう。チームとしても、昨年以上に、全体的にプレーの強度を上げていく必要があると思います。最後の球際の部分、足を止めずに何度も走る力強さ……そうした強度を上げていくことが、昨年以上の成績を残すためには必要になってくるのではないでしょうか。

 今回のキャンプを視察していて印象的だったのは、選手たちの表情です。ハードなトレーニングで疲れがある中でも、非常に充実感に満ちた、良い表情をしている選手たちの姿を見ることができました。『広島対策』が強化されることが想像される中で更なる高みを目指すことになる2023年シーズンですが、選手たちにとっては、ハードでありながらも充実のキャンプだったのではないでしょうか。

 ついに開幕を迎えたサンフレッチェ広島。今シーズンにも、大いに期待して応援していきたいと思います!

広島アスリートマガジン3月号は、WBC特集!『照準は世界一。栗林良吏、いざWBCへ!』。日本代表の一員としてWBCに出場する栗林選手インタビューをはじめ、世界の強豪国と戦ってきた石原慶幸コーチ、川﨑宗則選手のインタビューにもご注目ください!