『10』に代表されるように、サッカー界においても度々話題として取り上げられるのが、各選手の背負う背番号だ。ここではサンフレッチェ広島の選手に特化し、時代を彩った名選手の足跡を背番号と共に振り返る。

今季からサンフレッチェに加入した志知孝明。

◆期待の新戦力が背負う背番号

 Jリーグは創設1年目の1993年から1996年まで、1試合の登録人数は16人(現在は18人)で、先発の11人が1番から11番、控えの5人が12番から16番までをつける、いわゆる『変動背番号制』だった。今回紹介する背番号16は、その当時から代々の選手がつけてきた番号になる。

 1992年のJリーグヤマザキナビスコカップ(現JリーグYBCルヴァンカップ)の初戦、サンフレッチェ広島として初の公式戦で背番号16をつけていたのは、MF高橋真一郎。前身の東洋工業(マツダ)時代に加入した、当時34歳のベテランアタッカーだった。現役引退後はサンフレッチェのトップチームコーチやユースダイレクターのほか、ガンバ大阪や横浜F・マリノス、柏レイソルなどでアカデミー(育成組織)やトップチームの指導者を歴任している。

 ちなみに、このとき相手の読売ヴェルディ(現東京ヴェルディ)の16番はGKで、昨季からサンフレッチェのGKコーチを務めている菊池新吉。当時は先発GKが1番、控えGKが16番をつけるのが一般的だったが、この試合のサンフレッチェは控えGKを登録していない。詳細な記録が残っていないものの、先発が河野和正だったので、当時の日本代表で正GKだった前川和也に負傷などのアクシデントがあり、GK1人という珍しいメンバー構成で臨んだと思われる。

 選手がシーズンごとに1つの番号をつける『固定背番号制』が始まった1997年から1999年までは、GK下田崇が16番をつけた。地元出身、1997年は広島皆実高から加入してプロ4年目で、安定したセービングを武器に1998年から長くサンフレッチェの正GKとして活躍。現役引退後はサンフレッチェのGKコーチを経て、日本代表のGKコーチに就任した。

 2000年のDF川島眞也、2001年から2003年までのFW梅田直哉を経て、2004年から16番をつけたのは李漢宰。2001年に広島朝鮮高級学校から加入し、この年に初めて北朝鮮代表に招集されるなど飛躍のシーズンとなった。サンフレッチェでは豊富な運動量を生かしてボランチや右サイドで活躍し、2009年限りで契約満了となるまで16番をつけた。

 2010年から背番号16をつけたのはMF山岸智。この年は川崎フロンターレからの期限付き移籍で、左サイドの主力としてリーグ戦24試合に出場、ヤマザキナビスコカップの決勝進出に貢献するなど活躍し、翌年に完全移籍に移行した。

 印象深いのは、サンフレッチェでの最後のシーズンとなった2015年だ。負傷で出遅れた上にポジション争いは激しく、この年は2ステージ制だったJ1リーグの1stステージでは一度もメンバーに入れなかった。だが2ndステージの終盤に復帰すると、シーズン2試合目の出場だった第14節の川崎F戦の後半アディショナルタイムに劇的な決勝ゴールを決め、2-1の勝利に貢献する。

 これを機に最終節まで4連勝を飾ったサンフレッチェはセカンドステージ優勝、年間勝ち点1位となり、チャンピオンシップを制して3回目のJ1優勝を果たす。山岸はリーグ戦で4試合、28分間しか出場しなかったが、タイトル獲得につながる貴重な働きを見せた。

 2016年からはMF清水航平が16番をつけた。2008年の加入当初はFWだったが、その後はスピードと突破力を生かして山岸と同じく左サイドが主戦場となり、3回のJ1優勝にも貢献。加入当初から27番をつけていたが、山岸の退団を受けて16番に変更した。

 清水が2017年途中に清水エスパルスに期限付き移籍し、サンフレッチェの16番は2018年途中からコソボ国籍のFWべサルト・ベリーシャ、2019年はFW渡大生がつけた。この2019年にサンフレッチェに復帰した清水は27番をつけていたが、2020年に16番に変更し、2021年まで16番でプレーしている。

 2022年はMF浅野雄也が16番をつけたものの、同年限りで退団。代わって今季から背番号16を背負うのはDF志知孝明だ。2015年に当時J1の松本山雅FCに加入した後、J2やJ3のクラブでもプレーしながら徐々に評価を高め、サンフレッチェの一員となった。鋭いドリブル突破、利き足の左足から繰り出す正確なクロスが持ち味。前任者の山岸や清水のように、左サイドでタイトル獲得に貢献することが期待される。

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