開幕が目前に迫る中、昨年末にプロ入りを果たしたルーキーたちがデビューする日も近づいてきた。

 ここでは、2022年ドラフト指名選手たちのルーキーインタビューをお届けする。今回は、初の日南キャンプで一軍帯同の切符をつかんだドラフト6位・長谷部銀次。1年目からの活躍が期待される左腕の挑戦に迫った。

初の日南キャンプでは一軍に帯同。3月5日のオープン戦では2番手として登板し無失点に抑えた長谷部。

◆常に理想の姿を思い描き、一つひとつを『思考』する

─高校、大学、社会人といわゆる『名門』と言われるチームでプレーされてきましたが、長谷部選手の中でターニングポイントになったのはいつでしたか?

「慶應大に入ったタイミングと、大学で腰を手術したタイミングです。高校まではとにかくがむしゃらに目の前のことをやっていただけだったのですが、大学に入ってから、『どうやったらうまくなるんだろう』『どうしてこの投手は速い球が投げられるんだろう』と、常に考える癖がつきました。大学2年の秋には手術で1年間リハビリをしていたのですが、その中で、周りの選手を観察したり、『こういう姿で復帰したいな』という姿を思い描くことができるようになりました。自然と考える癖がついたという点では、大学時代がターニングポイントの一つだったと思っています」

─『思考する』という癖がつくようになったのには、何かきっかけとなる出来事があったのでしょうか?

「当時、大学の野球部でピッチングコーチをされていた林卓史助監督との出会いが大きかったです。腰の手術をしてリハビリをしていた時には竹内大助さんが助監督に就任されたのですが、僕にとってはお二人との出会いがすごく大きなポイントになりました。言い方を選ばずに言えば、お二人は理屈をしっかり考えて、『何をすればこうなるのか』『これをしたからこういう結果になる』と、しっかりと道筋を立てて指導をしてくださったんです。理屈を理解した上であれば再現性も高まりますし、僕の中でも腑に落ちた上で取り組むことができました。あとは、大学同期にレベルの高い選手が多かったことも影響していたと思います」

─大学時代に身についた『考えて、取り組む』という姿勢は、プロの世界でも長谷部投手の一つの軸になりそうですね。

「ただ正直なところ、春季キャンプまでは、『自分で考えて取り組むメニュー』は敢えてやらないようにしているんです。キャンプまでは未知数な部分がありますから、そこでオーバーワークになってしまうのが一番良くないことだと思っています。あくまでも、今は『慣れる時期』だと受け止めて、休むことも大切にしようと思っています」

─先ほど大学野球部のお話が出ましたが、ヤクルトの木澤投手は慶應大の同期にあたりますね。

「はい。木澤も同期ですし、社会人のENEOSで主戦で投げている関根智輝という右投手も大学時代の同期でした。彼らが高いレベルの技術で投げている姿を見ていたので、『負けたくない』という思いもありました。そうしたチームメートに『どこで、どのように勝つのか』を考えなければ試合に出ることができなかったので、そこも一つのポイントになったと思っています」

─マウンド上では、投げ終わった時に雄叫びを上げる姿が印象的です。もともと負けず嫌いなのでしょうか?

「はい。それだけでここまできたようなところもあります(笑)。僕自身、マウンドは『やるか・やられるか』の場だと思っているので、怖気付いたり引いてしまって自分を出せないのが一番いけないと思っています。堂々と出せるものを出して結果が伴わなければ、それは相手が上だったということだと思っていますから、割り切ってマウンドに上がるようにしています」

─トヨタ時代には、元・中日の吉見一起テクニカルアドバイザーから指導を受けられていました。吉見さんからのアドバイスで、特に印象に残っているものはありますか?

「僕はそれまでクロスステップで投げる癖があったのですが、『コントロールを安定させたり、パフォーマンスを上げていくためにはその部分を修正をしたほうが良い』というお話をいただいて、プレートの幅の中で投げるように一緒に取り組んでいただきました。僕自身、まだまだコントロールが良いとは言えませんが、ある程度まとまるようになってきたという意味では、大きな出会いだったと感じています」

─大学卒業後、プロではなく社会人の名門であるトヨタに進むことを決めた理由は何でしたか?

「春までは結果が伴わなかったということもあり、しっかりと力をちゃんとつけてからプロの世界に進まなければ『プロに行った』だけで終わってしまうと思いました。あくまでも、プロの世界に入って活躍しなければ意味がありませんから、社会人で自分を磨きたいという思いもありました。まずはトヨタでチームの勝利に貢献して、結果的にプロから指名をされたらいいなという思いでプレーしていました」

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