チーム創設から70年を超える歴史の中で、18名の監督がカープを率いてきた。選手不足、資金不足、人気低迷、成績不振……さまざまな困難を跳ね除け、紡がれてきたカープの歴史は、監督たちの歴史と言っても間違いではない。一際輝く名監督たちにご登場願おう。

2006年〜2009年でカープを率いたマーティ・ブラウン監督。(イラスト・オギリマサホ)

◆戦力差をチーム全員でカバー 三村敏之

 在任期間中に胴上げをされることはなかったが、多くの選手から慕われ尊敬される名監督。戦力格差をカバーするため、『トータルベースボール』を掲げ、チーム全員で戦う姿勢を見せるチームづくりを推進した。

 金本知憲、緒方孝市をはじめ、三村監督に厳しく育て上げられた多くの選手は、後に輝かしい成績を残している。

◆全ては勝利とファンのために マーティ・ブラウン

 4年の在任期間で8度の退場を課せられるなど、強烈なインパクトでファンの記憶に残る監督。審判の判定に対する猛抗議&不服が主な退場理由だったが、これは選手たちの闘志に火を着けるためのパフォーマンスであったと言われている。

 またこの時に、一塁ベースを引き抜いて投げ飛ばしたり、ホームベースに足で土をかけて隠したりと、ブラウンならではのアクションが注目を集め、球団もこの様子を記念Tシャツにして販売をしている。監督としての功績は、キャンプでの独自調整、先発の球数制限、中継ぎのローテーション化といった、ケガをせずにシーズンを乗り切る方針を徹底。カープの伝統と言われた猛練習とはまったく逆の方針でチームを率いた。

◆第2黄金期の土台を築いた 野村謙二郎

 1999年から続く、Bクラス常連だったカープ。戦力もあまりそろわず低迷が続いたが、2013年には3位に食い込み、チーム初のクライマックスシリーズに進出。

 選手としては前田健太(ツインズ)や丸佳浩(巨人)など球界を代表する選手を育て上げた。2016年からのリーグ三連覇を成し遂げるチームの土台を築いた監督としての功績は大きい。 

2015年〜2019年でカープを率いた、緒方孝市監督。(イラスト・オギリマサホ)

◆リーグ三連覇を成し遂げた名将 緒方孝市

 監督就任2年目にして25年ぶりのリーグ制覇を成し遂げ、そこから球団史上初のリーグ三連覇を果たすなど、多大な功績を残した名将。『守り勝つ野球』という自らの方針をチーム全体に浸透させ、一丸となって戦っていく姿勢は、古葉監督が率いたカープ黄金期を彷彿とさせた。

 中﨑翔太のストッパー起用や、機動力野球の徹底、鈴木誠也や田中広輔、菊池涼介など現カープも支える選手たちを数多く育成。チーム総合力はセ・リーグの中でも群を抜くほどだった。

 しかし輝かしい監督としての経歴の裏には、就任1年目で味わった大きな悔いの残る試合がある。それが、勝てば3位でCS進出、負ければ4位でシーズン終了という2015年最後の試合だ。

 緒方監督は中4日のエース・前田健太をマウンドへ送るが、対する中日先発・山本昌の前に打線は沈黙、9回まで1安打に抑えられた。カープは8回にマウンドを引き継いだ大瀬良大地が3ランを浴び、逆転できずに終戦。緒方監督は自身の著書の中で、「三連覇を決めた時よりも忘れられない試合」と振り返っている。

 そんな苦難を乗り越えて成し得た25年ぶりの優勝。優勝を知らないチームと、そして多くのファンに勝つことの喜びを味合わせてくれた監督だ。

 今回クローズアップした歴代監督を振り返ると、記録より記憶に残る監督として、多くのファンを喜ばせたのは2006年から4年間指揮を執ったマーティ・ブラウンだろう。審判の判定を不服として、ベースを投げたり、土をかけたりするパフォーマンスは今でも語り草となっている。

 一方で、先発投手の100球制限、リリーフ陣のローテーションといったリスクマネジメント改革や、ファンサービスの拡充を提唱し新たなプロ野球団の在り方を模索し続けた監督だった。

 2016年〜2018年にかけてリーグ3連覇に導いた緒方孝市は記憶に新しい名監督。若手の育成に注力し、数々の名選手を育て上げリーグを制覇してきた。

 実績のある選手を他球団から引き抜くFA戦略で補強した巨大戦力を有するチームに、真っ向勝負で挑み、決して屈することのない緒方カープは多くのファンの心を捉え、全国にカープ旋風を巻き起こした。

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