2005年から12年間をサンフレッチェで過ごし、数々のゴールとタイトル、あふれるクラブ愛でいまも多くの人々に愛されている佐藤寿人氏。

 共に紫のユニホームを着たチームメートがピッチ上で見せた才能、意外な素顔を、広島アスリートマガジンの連載『エースの証言』で振り返っていく。

 今回は2011年から2019年までサンフレッチェ広島でプレーし、3度のリーグ優勝を支えたDF・水本裕貴をフォーカスする。

2018年には史上22人目(当時)となる、J1通算400試合出場を達成。2023年に現役引退を発表した。

◆サッカーIQが高かった水本裕貴。彼の影響で、攻撃の質が高くなる

 ミズ(水本裕貴)と初めて会ったのは、相手チームの選手としてでした。ミズが千葉、僕が広島でプレーしていた2006年か2007年の試合で対戦し、マンツーマンでマークされたんです。

 当時の千葉はイビチャ・オシム監督の時代から、マンツーマンディフェンスをしてくることがありました。とはいえ、そんな相手は珍しいですし、ミズは本当に、どこに行ってもついてきます。「ずっとついてくるの?」と話しかけたら「マンツーマンなので」と答えていましたが、とにかく、うっとうしかったことを覚えています(笑)。

 その後も対戦相手としてだけでなく、日本代表で一緒にプレーして、ミズの能力の高さを再確認しました。スピードやフィジカルコンタクト、対人能力の高さに加えて、予測が優れているんです。攻撃の選手は、いかに守備側より早く反応するか、守備側の逆を突くかを考えながらプレーしますが、ミズは攻撃側の意図を読み取る能力が高いので、シュートを打つために空けておいたスペースに先回りされたりして、抑えられたことが何度もあります。サッカーIQ、インテリジェンスの高さを感じました。

 相手にすると嫌な選手ですが、味方になると、とても心強い。ミズが2011年にサンフレッチェに移籍してくると知ったときは、これでディフェンスが安定すると感じたことを覚えています。

 移籍1年目は東日本大震災の影響でJリーグが中断し、4月末に再開した矢先の5月上旬の試合で、ミズは相手選手との接触で頭蓋骨骨折・急性硬膜外血種の重傷を負ってしまいます。試合後すぐに病院に行き、ミズの家族と一緒に医師から説明を受けました。幸い手術も成功して大事には至らず、8月には実戦に復帰して、以前と変わらない安定したプレーを見せてくれるようになります。

広島アスリートマガジン5月号は、「まだ見たい!もっと見たい!」勝利を知る経験者たちの魅力をお届け!カープ3連覇を支えた投打の主力たちの現在地に迫ります。