今季から捕手に専念し、より確固たる地位を模索し続ける坂倉将吾。その打撃センスは間違いなくカープ打線の中心を担うべき存在であることは、誰もが承知の通りだ。しかし、現在までは思うような成績が残せていないのも悔しい現実だ。

攻守の要として、今やなくてはならない存在の坂倉将吾。1日でもはやく本来の打撃を取り戻したい。

 高卒7年目の25歳、そのセンスを見抜いたスカウトにも脱帽だが、坂倉の指名順位はドラフト4位。古くからプロ野球界では「ドラ4」は編成・育成の腕の見せ所と言われており、カープでも数々の選手が叩き上げられ成長を遂げている。ここで改めてカープの印象的な「ドラ4」を振り返ってみよう(2022年7月の掲載記事を再編集)。

◆水谷実雄(1965年ドラフト4位/宮崎商)

<通算成績> 1729試合 1522安打 244本塁打 809打点 

 初開催の1965年のドラフトで4位指名されたのは、宮崎商の水谷実雄だった。当初は投手として入団したものの、2年目から野手に転向。一時は戦力外になりかけたが、1970年に一軍に定着。1975年にはカープ初優勝のウイニングボールをつかみ、それ以降、打撃のギアがアップ。30歳で迎えた1978年には打率.348で首位打者を獲得した。

◆達川光男(1977年ドラフト4位/東洋大)

<通算成績> 1334試合 895安打 51本塁打 358打点 

 守備型の好捕手だった達川光男もドラフト4位。ドラフト指名時にパチンコ屋に行っていて後輩が呼びに来たエピソードはあまりにも有名だが、実は東都ではリーグ戦通算打率.226。現代であればもう少し打たないとドラフト4位では指名されない数字だった。ただ、プロでは通算打率.246と大学時代を超える率を残し、カープを代表する捕手として活躍した。

◆前田智徳(1989年ドラフト4位/熊本工)

<通算成績> 2188試合 2119安打 295本塁打 1112打点 

 レジェンド・前田智徳もドラ4。熊本工では甲子園に3回出場し、全国区のスラッガーだったが、高校生は「プロで通用するかどうか」の見極めが難しい。カープのスカウト陣が才能を信じた結果、2年目にはレギュラーに定着。24年間の現役生活で2119安打を放った。

◆金本知憲(1991年ドラフト4位/東北福祉大)

<通算成績> 2578試合 2539安打 476本塁打 1521打点 

 プロ野球の歴史に残る記録を残した金本も、ドラフト当時は懐疑的な存在だったと言えるだろう。当時隆盛を誇った東北福祉大で活躍していたものの、線の細さはドラフトにおいてはネガティブな要素だった。さらに若手時代は地面に送球を叩きつけてしまう悪癖もあった。しかし、そこで諦めず肉体改造に取り組んだ結果、3年目にはレギュラーに定着。通算476本塁打を放つ長距離バッターに成長を遂げた。

◆高橋 建(1995年ドラフト4位/トヨタ自動車)

<通算成績> 459試合 70勝92敗 5S 23ホールド 防御率4.33(NPBでの成績)

 通算459登板。苦しい時期のカープを、先発・中継ぎで支え続けた高橋建は異色の経歴の持ち主だ。横浜高から拓殖大に進み、3年生までは野手。東都2部で通算17本塁打を放ったスラッガーだったが、大学4年時に投手に転向。

 トヨタ自動車で投手として開眼し、補強選手での出場を含め、3年連続で都市対抗野球に出場した。ただ、指名当時は26歳。即戦力として期待しての指名だったが、まさかメジャーリーガーになるとは、本人もスカウト陣も夢にも思わなかったのではないだろうか。

◆小林幹英(1997年ドラフト4位/プリンスホテル)

<通算成績> 238試合 19勝22敗 29S 0ホールド 防御率3.90

 ルーキーイヤーの1998年にセ・リーグ会長特別表彰を受けた小林幹英もドラ4の掘り出し物と言える。新潟明訓高、専修大時代もドラフト候補に挙がっていたが、制球面を課題とみられ、指名を見送られてきた。しかし、カープスカウト陣は社会人で安定感を得たことを見抜き、4位で指名。1年目から54試合に登板し、9勝6敗18セーブ、防御率2.87の成績を収めた。

◆石原慶幸(2001年ドラフト4巡目/東北福祉大)

<通算成績> 1620試合 1022安打 66本塁打 378打点 

 扇の要だった石原もドラフト4位。東北福祉大では3度ベストナインに選ばれ、大学日本代表でもあったが、実はこの年のドラフトは「打てる捕手」が大豊作だった。

・浅井良(阪神・自由獲得枠/法政大)
・細川亨(西武・自由獲得枠/青森大)
・田上秀則(中日・3巡目/九州共立大)
・小田嶋正邦(横浜・3巡目/東海大)らが石原よりも先に指名されている。阿部慎之助が巨人で鮮烈的なデビューを果たした後だけに、豪快な打撃に目が行った結果ともいえるが、実は石原も高校通算57本塁打の打撃巧者。自由獲得枠の浅井、細川よりも、結果的に打ったのもドラフトの妙だ。

 その後の高校・大学社会人分離時代には青木高広(2006年大社4巡目)、松山竜平(2007年大社4巡目)などを獲得したカープ。偉大な先輩たちに続き、坂倉だけでなく現在も切磋琢磨している選手たちも『ドラ4の輝き』を存分に見せてほしい。

◆過去5年間のドラフト4位選手

2018 中神拓都(〜2022) 2019 韮沢雄也(内野手) 2020 小林樹斗(投手) 2021 田村俊介(外野手) 2022 清水叶人(捕手)