早くも混戦の様相を見せている2023年J1リーグ。リーグ戦では5連勝、ルヴァン杯では1試合5得点など好調な戦いもありながら、5月には若きエースストライカーの負傷離脱という、衝撃的な1戦もあったサンフレッチェ広島。

 ここではサンフレッチェ広島OB・吉田安孝氏に、好調のキーマン、印象に残ったゴールを熱く語ってもらった。

(データは全て5月8日の取材時点)

広島の左サイドで存在感を増しつつある志知孝明。

◆「途中出場の選手が流れを変える」。高い修正力も好調を支えるカギの一つ

 リーグ戦5連勝、ルヴァン杯でも順調に勝ち進むなど、今月もサンフレッチェ広島は素晴らしい戦いが続いています。森島司、川村拓夢の今シーズン初ゴールや、中野就斗のプロ初ゴールなど見どころはたくさんありますが、今回、特に注目したいのは、雨の中で行われた5月7日の福岡戦です。

 あの試合は、それまでキーマンとして得点を重ねていたドウグラス・ヴィエイラが出場停止となるなか、ナッシム・ベンカリファとピエロス・ソティリウの2トップで試合が始まりました。

 ドウグラスが出場できない分、前から強度を上げてホームで相手を圧倒しようというプランだったのだと思いますが、前半はその狙いがうまく機能していなかったという印象がありました。特に守備の場面では、サイドにボールが出た際に誰が行くのかがはっきりしておらず、福岡の選手に自由にされてしまったという印象があります。結果として、前半はほぼ相手のペースで進められてしまい、30分に失点。追う展開となってしまいました。

 しかし後半、システムを2トップから1トップ・2シャドーに変更することで、見事に試合を巻き返すことに成功しました。

 もちろん、システムを変更した結果うまくいったという面もありますが、それよりも素晴らしかったのは、ハーフタイムの監督の指示を受け、チーム全員が「前半の何が悪かったのか」を把握し、そこから修正するために、ピッチで自分が何を表現するべきかを理解していたことではないでしょうか。

 こうした個々の選手の修正力の高さは、今年のサンフレッチェの強さを支える要因の一つだといえるでしょう。

 途中出場した越道草太、エゼキエウ、志知孝明といった選手たちも、昨シーズンからの「サブの選手が流れを変える」という役割を見事に全うしてくれました。

 なかでも、越道、志知の両サイドは、特に素晴らしかったです。福岡戦で越道がピエロスに供給したクロスはピンポイントの高精度でしたし、志知の縦への突破力、クロスの質も見事でした。左サイドのスペシャリストらしいプレーの数々は、これからますます楽しみな選手だと感じさせてくれました。志知は、アシスト数など目に見える形での数字は残していませんが、チームへの貢献度が非常に高い選手だといえるでしょう。