サンフレッチェ広島ユースからトップ昇格をつかみ取り、プロ3年目の2019年には29試合に出場。2021年には東京五輪日本代表にも名を連ねた若き守護神は、2022年、クラブ悲願のカップ戦タイトル獲得を支えた正GKへと進化を遂げた。

 ユース時代の同期とともに、広島の未来を担う大迫敬介が語る“守りのプロフェッショナル”としての意識の変化とは。

(取材は4月27日、本文中のデータは一部編集当時のもの)

2022年は開幕戦こそサブスタートだったが徐々に出場機会を増やし、シーズン中盤からは正GKへと定着した。

互いの信頼関係があるからこそ、全員が前線からプレスに行けている

ー今シーズンはここまで10勝3敗2分、現在チームは3位につけています(5月9日時点)。3月12日から4月にかけてはリーグ戦で5連勝もありました。うち3試合はクリーンシート(無失点)でしたが、大迫選手自身の手応えはいかがですか。

「5連勝のうち3試合を無失点で終えられたことは、ゴールを守るGKというポジションからすると、最低限の仕事はできているのかなと思います。ただ、どの試合も僕自身がなにか決定的に大きな仕事をしたというよりも、チーム全体でしっかりと堅い守備ができているからこその結果だとも思っているので、自分自身が、というよりも、チーム全体として良い方向に向かっているのではないかと感じています。ここまで印象的な試合もたくさんありましたが、中でも特に記憶に残っているのは、やはりリーグ戦初勝利をつかんだG大阪戦(3月12日、◯1ー2)ですね。5連勝が始まった試合でもありますし、あの試合は印象に残っています」

ー今シーズン、チームがもっとも変化した部分はどこでしょうか。

「監督も選手もほぼ入れ替わりがなかったので、なにかが大きく変化したというよりも、これまで取り組んできた戦術をより深めることができているのではないかと思っています。キャンプも含めて積み上げてきたものがありますし、サンフレッチェ本来の強みであった堅い守備も、より強化されてきたのではないかと感じます。今は主にDFを3人起用する3バックのシステムで試合に臨んでいますが、その強固な3バックの守備があるからこそ、チーム全体で前から激しく相手のボールを奪いに行くことができていると思っています。この、『チーム全体で前からボールを奪いに行く』というスタイルも、昨シーズンからの積み重ねの上でより精度を増してきているのではないかと感じますね」

ー『前線からのプレッシング』は昨シーズンから続くスタイルですが、試合中はDFラインがかなり前線まで上がっているように感じます。一番後ろで守っているGKとして、こうしたチーム全体の戦術をどのように捉えていますか。求められる技術などに変化はあったのでしょうか。

「そうですね。やはり前から相手のボールを奪いに行く分、後ろのディフェンスのスペースは大きく空いてしまいます。その分、GKである自分が守るスペースも広くなりますが、選手同士のお互いの信頼関係があるからこそ、攻撃の選手たちも前から行くことができているんだと思っています。今シーズンは、そうした連携もさらに深まっていると感じますね。一方で、相手チームからの対策が強化されているなと感じることもあります。コーチや他の選手たちとは、自分たちのプレスを剥がされてしまったり、ロングボール1本で相手に収められてひっくり返されてしまうことが増えているように感じる、という話はしています。ただ、根本的には、自分たちのスタイルは変わらないというのがチーム全員の意識ですし、では誰が誰に行くのか、前に行くとしてもどうやって行くのかといったより深い部分、具体的な部分について、スタッフや選手同士で話をすることもあります」

《プロフィール》
大迫敬介 おおさこ けいすけ
1999年7月28日生、鹿児島県出身
サンフレッチェ広島ユース出身。2017年にトップ昇格を果たすと2019年に公式戦デビューを飾り、自己最多となる29試合に出場。林卓人らとポジション争いを繰り広げながらも2022年は再び正GKの座をつかみとり、クラブ初のカップ戦タイトル獲得に大きく貢献した。FW・満田誠、MF・川村拓夢はユース時代の同期。