『10』に代表されるように、サッカー界においても度々話題として取り上げられるのが、各選手の背負う背番号だ。ここではサンフレッチェ広島の選手に特化し、時代を彩った名選手の足跡を背番号と共に振り返る。

2017〜2019年まで広島でプレーしたのち、G大阪へ移籍(復帰)。現在は京都でプレーしているパトリック。

◆脅威の身体能力を誇った代表選手、J1残留へ導いた強力助っ人……そして、若きエースストライカーが背負った背番号

 今回紹介する背番号『39』は、1997年にJリーグの固定背番号制が始まって以降、4人しかつけておらず、特定のポジションを意味する番号でもない。だが、4人それぞれに記憶に残る活躍を見せ、サンフレッチェの歴史に名を残している。

 2008年、初めて39番をつけたのはFW久保竜彦。過去の連載で取り上げたように、固定背番号制が始まった1997年から2002年までは10番を背負っていた。サンフレッチェが初めてJ2に降格した2003年、横浜F・マリノスに完全移籍。横浜FCを経て、サンフレッチェが二度目のJ2降格となった2008年に復帰した際、背番号が39となった。

 再びプレーする機会を与えてくれたクラブへの感謝を示す『39=サンキュー』の背番号だった。同年の第28節では古巣の横浜FCから得意のヘッドでゴールを決めている。1年でのJ1復帰に貢献し、翌2009年限りで契約満了となったが、キャリアの晩年に、プロとしてスタートを切った広島の地で印象的なプレーを見せた。

 その後しばらく空き番号となっていた39番が復活したのは2017年、シーズン途中の6月。ガンバ大阪からFWパトリックが期限付き移籍で加入(G大阪では母国ブラジルのクラブからの期限付き移籍でプレーしており、そのブラジルのクラブからの期限付き移籍)して、背番号39を背負った。

 この年のサンフレッチェは開幕直後から低迷してJ1残留争いを強いられており、パトリック加入直後の7月には森保一監督が退任。三度目のJ2降格の危機を迎える中、パトリックは期待に応えてリーグ戦15試合に出場して4得点を挙げ、J1残留に導いて救世主となった。

 さらに、翌2019年はリーグ戦33試合に出場してチーム最多、リーグ得点ランク2位の20得点を挙げる大活躍。サンフレッチェはJ1リーグで首位独走から一転、中盤以降に急失速して2位に終わったものの、パトリックがけん引する形で前年からのV字回復を果たした。翌2019年7月にG大阪に復帰して退団したものの、短期間で大きなインパクトを残している。

 パトリック移籍直後の2019年8月、同じブラジル国籍のFWレアンドロ・ペレイラが入れ替わるように加入。同年に当時J1の松本山雅FCに完全移籍していたが、チーム戦術にフィットしなかったこともあり、期限付き移籍でサンフレッチェに加入して39番を背負った。

 サンフレッチェでも負傷離脱などがあり、その年のリーグ戦出場は9試合だったが、4得点を挙げて決定力の高さを見せた。翌2020年はJ1リーグ開幕戦で1得点2アシストの大活躍を見せ、3-0の勝利に貢献。直後に新型コロナウイルスの影響でJリーグの全公式戦が中断となり、再開後は過密日程での戦いを余儀なくされたが、リーグ戦26試合に出場してチーム最多、リーグ得点ランク3位となる15得点を挙げる活躍を見せた。

 レアンドロ・ペレイラがG大阪に完全移籍した2021年は空き番号だった39番は、2022年にFW満田誠が背負うことに。サンフレッチェ広島ユース出身で、高校卒業時のトップチーム昇格はできなかったが、流通経済大での4年間で成長し、サンフレッチェでのプロ入りを果たした。足立修強化部長によると「本人が39番を希望した」という。

 開幕当初のリーグ戦ではメンバー外、JリーグYBCルヴァンカップでも控えだったものの、ルヴァンカップのグループステージ第2節の前半、負傷したMF東俊希に代わって途中出場すると、プロ初ゴールを決めて勝利に貢献。これを機にリーグ戦でも先発の座をつかむと、豊富な運動量を生かして攻守両面で大車輪の活躍を見せるようになり、7月には日本代表デビューも果たしている。

 10月の天皇杯決勝では、1-1で迎えた延長後半終了間際にPKを止められ、PK戦の末に準優勝に終わる悔しさを味わった。だが、1週間後のルヴァンカップ決勝ではCKから逆転ゴールをアシストするなど、初優勝に貢献。涙を流して喜ぶ姿が、天皇杯決勝後に感じていた重圧の大きさを思い起こさせた。

 2023年から背番号を、佐藤寿人が2016年限りで退団して以来、長らく空き番号になっていた『11』に変更。さらなる飛躍が期待されていたものの、5月7日の試合で負傷し、右膝前十字靭帯部分損傷と診断された。手術はせずにリハビリに取り組んでおり、復帰時期は未定。悔しい戦線離脱となったが、万全のコンディションで復帰し、再びピッチ上で輝きを放つことが期待されている。