6月12日、サンフレッチェ広島レジーナ中村伸監督のシーズン総括会見が行われた。昨シーズンよりも順位を一つ上げ、5位で終えたレジーナ。ここでは、指揮官が1年間の軌跡を振り返った内容をお送りする。

2023-24シーズンも引き続きチームを率いることが発表された中村伸監督。

◆選手の成長を示すことができた、チーム創設2年目のシーズン

 今シーズンを振り返ると、全体的な部分では、チームで目指そうと話していたトップ3に入るという目標に手が届かなかったこともあり、満足感はなく、物足りなさを感じています。

 ただ、昨シーズンにはなかった逆転勝利があったり、2点差を追いつくような試合があったりと、いろいろな顔を見せることができた点には、選手たちの成長を示すことができたとも感じています。トレーニング、試合を通して経験値を高めながら、エラーにもしっかりと向き合い、自分たちに必要なことを整理しながら積み上げる作業ができるのは、レジーナの強みだと思っています。少しずつ自分たちの武器を研ぎ澄まし、やれることを増やしていった結果、シーズンを右肩上がりに持っていくことができたのではないかと感じています。

 今シーズン、あえてベストゲームを上げるとすれば、日テレ・東京ヴェルディベレーザ戦(12月4日、○0ー1)です。我々のやりたいことができない、相手の特徴を消すことができない試合が多かったなかで、あの試合ではチーム全体でつながりながら、臆することなく、我々のやりたいことをしっかりピッチで表現できました。最後は怒涛の押し込まれ方をしましたが、チームでつながりを持って耐え忍びました。選手たちの成長を感じられた試合だったと思います。ゲームになかなか絡めない選手であっても、しっかり自分たちに目を向けて、100%以上を出してトレーニングに取り組んでくれた結果の成長であったと思います。

 なかでも一人の名前を挙げるとすれば、シーズン後半、特に攻撃の部分でチームに違うアクセントを見せてくれた中嶋淑乃です。彼女自身とも、フィニッシュにつながる部分の質を上げていかなければいけないという話をしていましたし、チーム全体としても、彼女のストロングを引き出すことができる場面が増えたと感じています。

◆上位チームとの違いは『得点力』。主導権を握れる試合を増やしたい

 一方で得点力の面では、5得点以上をあげた選手は中島のみでした。上位3チームとの1番の違いはそこだったと思っています。

 チームとしても、まずは前線の選手が点を奪える形をつくるために攻撃のバリエーションを増やしていこうという話はしていましたし、チャンスをつくり出す場面で、絵を共有する部分が増えてきたと思っています。ただ、最後の決め切る部分でそれぞれのクオリティ、考え方のすり合わせがもう一つ足りなかった。それが、得点力という結果に出てしまったのではないかと思っています。

 急激に覚醒するアタッカーが出てくるということもなくはないと思いますが、そうした選手をつくり出すための、チームとしての方向性を明確にする作業は、引き続きやり続けるしかないと思っています。

 また、守備の面では失点数が増えていました。我々の目指すスタイルと今の選手たちの特徴を考えると、もっと主導権を握るような形をつくり、ゴールにつなげるシーンが増えてくれば、攻撃の時間も増え守備の負担も減ってくると考えています。

◆選手の背中を押し続けてくれた、どのクラブよりも大きな『声援』

 今シーズンは、1点差で敗れた試合が6試合ありました。どんな相手にも臆することなく強みを出すことができたからこそ、拮抗した試合が増えたのだと感じています。一方で、より上の順位を目指すのであれば、ゴール前の詰めの精度を上げる作業をしていかなければなりません。上位チームを相手に勝ち切ることができなかったのは、その差が大きかったのではないかと考えています。

 ファン・サポーターのみなさんには、ホームでもアウェイでも、どのクラブよりも大きな声援で選手たちの背中を押していただきました。最後の最後まで選手たちが戦い抜くことができたのも、みなさんからたくさんの勇気を与えていただいたからだと感謝しています。

 今シーズンは、そんなみなさんと6回しか笑って試合を終わることができず、改めて、チームも選手も成長していかなければならないと感じました。来シーズンは、また一緒に成長していけるような関係、環境の中で選手にもプレーしてもらいたいですし、そうしたサポートをしていただけると、選手たちもより力を発揮してくれると思っています。これからも、引き続き一緒に戦っていただければと思います。