全国の高校球児が目指す憧れの舞台・甲子園。広島県代表校を決める、第105回全国高等学校野球選手権記念大会・広島県予選が間もなく始まろうとしている。

 昨夏代表の盈進をはじめ、注目校がひしめく広島県大会。ここでは、広島の名門・広陵高野球部監督であり、多くのプロ野球選手を育成してきた中井哲之監督のインタビューを再編集して掲載する。野村祐輔、上本崇司らを育てた名将が語る指導哲学とは。(取材は2022年7月に実施)

中井監督の教え子は、広島に限らず多くの球団に巣立っていった。

いつも気になる教え子たち。彼らのプレーしか見ていない

ー一軍での存在感が増している上本崇司選手は、中田廉投手(2022年現役引退)と共に2009年の卒業生で同級生です。

「そうですね。崇司は、大きな試合になればなるほど力を発揮する子でしたし、張り切る子でしたね。甲子園でホームランを打ったり、結果も出していました。ファンのみなさまを楽しませているあのパフォーマンスは、あくまでもプロとしてやっていますよね。本来の崇司はシャイで、礼儀正しくて、人に自分のことを伝える時は、謙虚な子です。新井貴浩選手(現監督)のモノマネにしても、うまいじゃないですか。楽しいからついついやってくれと言うんですけど、彼も32歳(取材当時)なので「誰か他の人にやってくれ」と思いますよね。でも、崇司よりうまいやつはいないでしょうね(笑)」

ー中田投手ですが、ここ数年は苦しいシーズンが続いています。

「廉はすごく、ストイックな練習をしますよね。思考錯誤しながら、常に模索して努力をしています。いろんなことを吸収しようとしているのですが、自分のものが見つけきれない、研究熱心さが邪魔をしているところもあるかもしれません。高校のときはそういう風には見えなかったですけどね(苦笑)。「打てるものなら打て」というような精神的な開き直り、強気のハートを持って、挑んでほしいですね」

ー最後に中村奨成選手についてです。5選手の中ではいちばん若い選手ですが、広陵高時代は3年夏の甲子園でホームラン記録を塗り替えるなど、注目を浴びました。

「彼はカープで現役としてプレーしている卒業生の中では一番若いですから、気になるし、心配です(苦笑)。足も、肩も、運動神経もカープで頑張っている現役卒業生の中ではズバ抜けていると思います。甲子園で成績を残し、高校生でプロに行った分、注目度が違いますよね。それだけに苦労した面もあったかと思います。その中で、プロのすごさを感じながら死に物狂いで頑張っていますね。今は捕手、外野を守っていますが、それは彼の運動能力を見てのことだと思います。ただどちらにしても、レギュラーになれるだけの素材はあるとは思います」

ーお話を伺っていると、みなさんへの愛情を感じます。普段のプレーはご覧になっているのでしょうか?

「いつも気になっていますし、私は教え子のプレーしか見ないですね。またカープ以外の各チームにも教え子がいますが、先発、ベンチメンバーなどは試合前に分かるので、その都度交代したらチャンネルを変えて見ています。彼らも私がいつも見ていると知っているんじゃないですかね。打率も二軍での成績もチェックして言いますよ(笑)」