『鉄板』と呼ばれるサンフレッチェの最終ライン。その一角を担う荒木隼人は、広島がリーグに誇る最強のCBだ。長身と強靭なフィジカルを武器に、2022年シーズンの自陣空中戦ランキングリーグ1位に輝いた。

「今は広島のチーム力が試されている時」そう口にした荒木が語る、今シーズンへの思いをお届けする。

空中戦でリーグトップクラスの強度を誇る荒木隼人。

コロナ禍での無観客試合を経て、懐かしい声援が戻ったスタジアム。

ーまずは荒木選手ご自身、2023年シーズンここまでの試合を振り返ってみていかがですか?(取材は6月2日、データの一部は6月15日時点のもの)

「自分自身の手応えとしては、『可もなく不可もなく』と捉えています。調子が良いかと言われるとそうでもありませんが、すごく不調かと言われるとそうでもない。状態としては普通ですが、満足はしていない、といったところです。今シーズンはここまでリーグ戦では17試合に出場(6月15日時点)していますが、一番印象に残っているのはやはりホーム開幕戦(2月18日・札幌戦、△0ー0)ですね。久しぶりにスタジアム全体での声出し応援が可能になった試合でもありますし、新鮮さや懐かしさもあって、すごく印象に残っています。声出し応援があるのとないのとでは、選手の気持ちもまったく違います。コロナ禍が始まったばかりの頃は声出し応援も拍手もありませんでしたし、観客すらいないという試合もたくさんありました。そこから少しずつ緩和されてきて、ようやくスタジアム全体で声を出すことができるようになりました。ファン・サポーターのみなさんから送られる声援は、僕たち選手に非常に力を与えてくれています」

ー印象的な試合というお話がありましたが、C大阪戦(4月29日、○0ー1)では、決勝弾につながるエゼキエウ選手へのパスもありました。あのシーンが印象に残っているサポーターも多いのではないかと思います。

「あのシーンはセットプレーのために相手ゴール前まで上がっていたのですが、セットプレーが続いている状態だったので、その場に残っていたんです。あのパスについては、実は『何も考えていなかった』というのが正直なところです。体が勝手に反応したというか。ボールを持った時点でエゼキエウ選手が走ったのが見えたので、そこはシンプルにエゼキエウ選手を使いました。C大阪とは昨シーズンもよく対戦しましたし、ルヴァン杯では決勝戦でも戦いました。僕たちからすると、劇的な勝利が生まれるというイメージのある相手でもあります」

ーチームは現在、負傷で離脱する選手も出てきています。チーム全体で、どのように対応していこうと話をされていますか。

「ケガ人が出てしまうことは仕方ないことだと思っています。キャンプやシーズン当初から、監督も『全員でしっかりチームをつくってきた』と言っていたので、今は広島のチーム力が試されている時なのだと感じています。どの選手が出場しても勝てることで、チーム全体のレベルアップにもつながっていくと思います」