◆余裕を生み出した“割り切り”

 初の開幕一軍に選出された塹江にとって、一軍の居場所は自らの投球で手繰り寄せていくしかない。そして与えられる登板機会はあくまでも不確定であり、緊急登板を強いられることもある。ブルペンからマウンドに向かい打者に対峙するための気持ちをつくりあげることに苦労する投手も珍しくない中で、今季の塹江は堂々とした投球を継続している。

「もともとブルペンでは球数を投げて納得してからマウンドにいきたいタイプだったんですけど、やっぱりそれじゃダメだと思ったんです。少なくとも昨季からはそういうことを意識していて、最近やっとしっかりマウンドに上がれるようになった気がします」

 ある程度の“割り切り”を持つことが、塹江が見せるマウンドでの力強さを生み出す要因となっていった。今季の春先からの快投は決してまぐれなどではない。これまでのプロ生活で紆余曲折を経ながらも、様々な経験を自らの骨肉としてきたことが生み出す確かな自信を塹江は持っている。

「今年何かが変わったように見えるのであれば、数年前から少しずつ変化させたことが顕著に現れているのだと思います」

 高いポテンシャルに確かな自信を携えた背番号36。一軍定着へ、力強く左腕を振り切っていくのみだ。