◆意識改革で臨んだキャンプ

「これまではどうしても周囲の投手の存在を気にしすぎていたと思います。特に自分と同じような位置にいる若手選手ですね。以前は自分は周囲の選手と比べてどうだとか、もっと言えば一軍の勝ちパターンの投手と比べて自分がどれぐらいの力量の差があるのかとか、そういうことを考えながらやっていました。そこで1回自分のことに集中してみようと思ったのが今年のキャンプですね」

 一軍スタートとなった春季キャンプでは、これまでとは違った意識で臨み、第1クールから精力的に投げ込みを続けた。「毎年春は調子が良くない」と本人は口にするが、今年はオープン戦、そして練習試合などの実戦で結果を残し続けた。フランスア、DJジョンソン、岡田明丈ら期待されていた主力リリーフ陣の出遅れもあり、塹江の調子の良さは際立っていた。

 「マウンドで焦らずにできているというのが、僕の中では大きいですね。投球面で言うならゾーンで勝負する、つまり打者に打たれるリスクを負いながら勝負ができているのだと思います。」

 意識面の変化は数字にも現れ始め、練習試合では目に見えて四球数の減少、高い奪三振率につながっていた。元々、直球とスライダーの質には定評があったが、“ゾーン”で勝負する意識を持つことで、打者に対し優位な状態で勝負ができるようになっている。