2005年から12年間をサンフレッチェで過ごし、数々のゴールとタイトル、あふれるクラブ愛でいまも多くの人々に愛されている佐藤寿人氏。

 共に紫のユニホームを着たチームメートがピッチ上で見せた才能、意外な素顔を、広島アスリートマガジンの連載『エースの証言』で振り返っていく。

37歳となった現在も、愛媛FCで現役でプレーしている森脇

◆円熟味を増した2012年。J1初優勝に大きく貢献

 僕がベテラン、良太が中堅と呼ばれる年齢になってからは、シーズン開幕前の自主トレを一緒にやったこともあります。良太は若手の面倒をよく見るので、後輩にいじられながらも慕われていて、パーソナリティーも魅力の一つでした。

 2011年にはアジアカップの日本代表に追加招集され、優勝メンバーになっています。試合に出場しなかったのに、最後の表彰式で誰よりも目立っていましたが(笑)、サンフレッチェでのプレーが評価されたのは素晴らしいことでした。

 2012年、4月に26歳になって円熟味を増した良太はシーズンを通して素晴らしいプレーを見せ、J1初優勝に大きく貢献しました。誰が欠けても優勝にはたどり着けなかったと思いますが、良太の活躍は特に印象深く、ファン・サポーターのみなさんにはアウェイの名古屋戦での『パスゴール』が記憶に残っているのではないでしょうか(※試合終了間際、左からのクロスボールに攻め上がってきて頭で折り返すと、そのままゴール。試合は2対1で勝利)。試合後は「寿人さんに合わせようと思ったら、そのまま入りました」と笑っていましたが、あの時間帯に敵陣まで攻め上がったスタミナや走力、勝利への強い思いが実ったゴールでした。

 広島市内で行われた初優勝のパレードで「広島最高!」と叫んだ翌日に、浦和への移籍を発表して会見を開いたことも良太らしかったですが、翌年から対戦相手になると、ストライカーにとって非常にやっかいな選手でした。攻撃面の良さは実感していましたが、守備もうまさと強さがあり、経験を重ねながらレベルを高めていったのだと思います。

 その後は京都を経て、2022年から現在はJ3の愛媛でプレーしています。37歳、キャリアの終盤にプロとして飛躍する土台を築いたクラブに戻り、昇格に貢献して恩返しをしてほしいです。それができる選手ですし、ピッチ内外で良い影響を与えているでしょう。

 プロキャリアのスタートから見てきた選手は多いですが、良い意味で最も予想を裏切ってくれたのが、良太です。あのままサイドバックでプレーしていたら、ここまで長くプロでは活躍できなかったかもしれません。僕も指導の現場に立つようになり、指導者ライセンスを取得するための準備をしていると、適材適所で輝いた良太の存在は勉強になります。

 いじられることで周囲を笑顔にして、自分も笑顔になるので、自然と周りに人が集まってくる良太のキャラクターは、とても貴重なものだと思います。まずはケガなくシーズンを戦い抜き、愛媛をJ2に昇格させて、喜びを爆発させる良太の姿が見たいです!

広島アスリートマガジン8月号は、「追悼特別特集 北別府 学 ありがとう 20世紀最後の200勝投手」カープが誇る大エース北別府学氏が残した偉業の数々を振り返りながら、強いカープを共につくりあげた仲間たちが語るその姿をお届けします。