7月にはC大阪から加藤陸次樹が、そして8月には横浜FMからマルコスジュニオールが加入するなど、夏の移籍市場を賑わせたサンフレッチェ広島。リーグ戦再開後は離脱選手の復帰もあり、熱い試合でファン・サポーターを盛り上げている。
ここではOB・吉田安孝氏が、7月のサンフレッチェを振り返る。巻き返しを図るチームのなかで、注目すべきポイントとは。(記事中のデータはすべて7月25日の取材時点)
◆選手、首脳陣に体調不良が続出するなか、『勝利への執念』を感じたドロー
7月は、さまざまな試練がチームを襲った1カ月でした。アウェイの新潟戦(7月1日、●2ー0)で敗れたサンフレッチェは、エディオンスタジアム広島で、鹿島、横浜FCと対戦。ホームの力を得てなんとか現状を打開したいところでしたが、ともにドローという結果に終わりました。
まず、7月8日の鹿島戦(▲1ー1)では体調不良者が続出。スキッベ監督も戦線を離脱し、急遽、迫井深也ヘッドコーチが監督代行を務めました。
3バックにはルーキーの中野就斗らが起用され、ベンチには広島ユースの中島洋太朗、中川育らが入りました。いつも通りのスタメンとはいかないなか、迫井ヘッドコーチは「これはピンチではなくチャンスだ」と選手に奮起を促し、選手たちもそれに応えて奮闘。スタメン起用された松本大弥は、相手FWの鈴木優磨をしっかりマークしていましたし、持ち味であるキックの質や展開力も、存分に発揮できていたのではないかと思います。
今シーズン、ここまでなかなか出番に恵まれなかったものの、チャンスがあればしっかり自分のパフォーマンスを発揮することができる。これは、選手それぞれが日頃のトレーニングを大切にしている成果だと思います。そうした姿を見ていたからこそ、指導者たちも、チームのピンチであったとしても、まったく不安に思うことなく選手をピッチに送り出すことができたのだと思います。
この試合は、選手それぞれが、自分の100%の力、個性を出し合ったうえで互いの力を認め合い、同じ一つの結果を求めて戦っていく姿を見せてくれました。本当の意味での『一体感』を感じられる、そんな一戦だったのではないかと思います。
苦しい状況のなかでつかみとったこの引き分けには、勝点以上の価値があったのではないでしょうか。まさに、チーム一体となった、『勝利への執念』を感じた試合でした。