7月にはC大阪から加藤陸次樹が、そして8月には横浜FMからマルコスジュニオールが加入するなど、夏の移籍市場を賑わせたサンフレッチェ広島。リーグ戦再開後は離脱選手の復帰もあり、熱い試合でファン・サポーターを盛り上げている。

 ここではOB・吉田安孝氏が、7月のサンフレッチェを振り返る。巻き返しを図るチームのなかで、注目すべきポイントとは。(記事中のデータはすべて7月25日の取材時点)

8月13日の浦和戦で移籍後初ゴールを挙げた加藤陸次樹。チームは7試合ぶりの勝利を飾った。

広島ユース出身のストライカーと、2019年得点王が電撃加入

 今夏は、ファン・サポーターのみなさんにとっても驚きのニュースが飛び込んできました。C大阪に所属していた加藤陸次樹、そして横浜FMに所属していたマルコスジュニオールの完全移籍加入です。

 2019年の得点王であるマルコスジュニオールはもちろんのこと、広島ユース出身選手であり、C大阪でもエースとして活躍していた加藤の加入は、チームとしても願ったり叶ったりと言えるでしょう。加藤には、ここから広島の中心的スターになっていってほしいと思います。

 7月24日に行われた加入会見で印象的だったのは、「一番最初に、両親に移籍の相談をした」という部分でした。

「プロサッカー選手である前に、良い社会人たれ」とは、サンフレッチェの礎を築いた今西和男さんの言葉ですが、加藤の家族を大切に思う心、人間的な部分も、クラブが掲げる理念にぴったりなのではないかと感じました。移籍を決断した最大の理由を聞かれ、「直感」と応えた姿も印象に残っています。もちろん、さまざまな情報を取り入れて吟味することも大切ですが、厳しいトップの世界で生きるには、ひらめきや直感力も重要です。

 ユース出身の加藤は高校卒業時にトップ昇格とはならず、大学に進み、そこからC大阪へと加入しました。本人の中にも、「いずれはサンフレッチェで」という思いがあったはずです。そうした気持ちを持ち続けてやってきたからこそ、そして、クラブもそんな彼の姿を見続けてきたからこそ、このタイミングでの電撃獲得になったのでしょう。加藤はフィニッシャーにもなれますし、オールラウンドな活躍も期待できるプレーヤーです。まさに今、サンフレッチェが求めているものに、ぴったりとはまってくれる選手なのではないかと思います。

 今シーズン、サンフレッチェがここから巻き返していくためには、猛暑のなかではありますが、『どれだけ走ることができるか』という点が非常に重要です。もちろん、暑さに苦しむのはサンフレッチェだけではありませんが、昨シーズンは、厳しい夏場に勝点を積み重ねたことで、上位に抜け出すことができました。

 新戦力の加入や離脱選手の復帰、悔しいカップ戦の結果など、さまざまな動きがありましたが、ここからはリーグ戦に集中できると捉えたいところです。ここからどんな化学反応が起こっていくのか、注目していきたいと思います。