2005年から12年間をサンフレッチェで過ごし、数々のゴールとタイトル、あふれるクラブ愛でいまも多くの人々に愛されている佐藤寿人氏。

 共に紫のユニホームを着たチームメートがピッチ上で見せた才能、意外な素顔を、広島アスリートマガジンの連載『エースの証言』で振り返っていく。

『佐藤寿人サッカーキャラバン』で、ともにコーチを務めた清水航平氏(写真提供:佐藤寿人氏)

◆選手の心情を理解できる現役時代の財産になるはず

 初優勝に貢献した航平ですが、絶対の主力になったわけではなく、翌2013年から2015年までのリーグ戦出場数は、むしろ減っています。サイドアタッカーの競争は激しく、簡単にはピッチに立てない状況でしたが、それでもレベルアップの努力を続けていました。

 ここで航平が、いろいろなポジションをやってきた経験が生きました。特に3バックの一角をこなせることが、チームの戦い方に多くの選択肢をもたらすことになります。身長は168センチと小柄ですが身体能力が高く、体のぶつかり合いでも相手にしっかり対応して、力強さは体格以上のものがありました。

 もちろんサイドアタッカーとしても成長して、僕の印象に残るゴールを数多くアシストしてくれました。2015年のセカンドステージ最終節・湘南戦では、左サイドからのセンタリングで、ゴンさん(中山雅史)に並ぶJ1通算157得点目をアシスト。僕のサンフレッチェでの最後のゴールになった、2016年のセカンドステージ最終節・福岡戦での先制点も、航平の左からのセンタリングをヘッドで決めたものでした。

 僕は2016年限りでサンフレッチェを離れ、航平も2017年途中から他のクラブでプレーしましたが、2019年に復帰して2021年まで在籍して、現役最後のクラブはサンフレッチェでした。ベテランの域に入ってから復帰することになったのは、航平のパーソナリティーがクラブに評価されていた証でしょう。

 今年7月に航平が現役引退を発表する前から、山岸(智)も加えた3人で育成年代のクラブ「LEGARE FC」を広島で立ち上げる準備を進めています。現役時代の航平はスポットライトを浴びただけでなく、下積みが長く、試合に出られない苦しい時期も経験しました。だからこそ指導者になれば間違いなく、さまざまな立場の選手の心情を理解できる。それは強みであり、航平が現役時代に勝ち取った財産になるはずです。

 航平は学年でいうと8つ下ですが、僕をいじってくることもあり、年が離れている弟のような存在です。プロ1年目から一緒にプレーして、ほめたり、厳しく指摘したりしながら、愛情を持って接してきました。お互いに現役を引退して、また一緒に仕事ができるのは、とてもうれしいですし、一緒にやりたいと思わせる魅力が航平にはあるんです。

 もちろん、選手ではない立場で仕事をしていくためには、一人の社会人として勉強しなければいけないことも多いですから、僕も先輩として、厳しくも愛情を持って接していきます。そこは引退後も変わらないですね(笑)。航平、これから一緒に頑張っていくよ!

《プロフィール》
清水航平(しみず・こうへい)
1989年4月30日生、福岡県出身、ポジション・MF
サンフレッチェ広島/2008〜2017年、2019〜2021年
東海大五高(福岡)から2008年にサンフレッチェに加入し、2011年までは出場機会が少なかったが、2012年に左サイドの主力となり、J1初優勝に貢献。2017年途中から清水エスパルスなどでプレーし、2019年に復帰。2021年限りで契約満了となり、今年6月に現役引退を発表した。