『10』に代表されるように、サッカー界においても度々話題として取り上げられるのが、各選手の背負う背番号だ。ここではサンフレッチェ広島の選手に特化し、時代を彩った名選手の足跡を背番号と共に振り返る。

愛媛FCへのレンタル移籍を経て、2022年に広島に復帰。中心選手として活躍する川村拓夢。

◆中盤で活躍したあの選手、武者修行を経て主力へと成長したあの選手……背番号29にまつわるエピソード

 2016年から2年間は、MF森島司が29番を背負った。浅野拓磨と同じ四日市中央工高出身で、浅野がサンフレッチェに加入した2013年、足立修強化部長が学校までお礼に出向いた(のちにJリーガーとなった当時の3年生の視察を兼ねていた)際に、1年生で光るプレーを見せていた森島に目を留め、3年後に獲得に至ったというエピソードがある。

 2年目の2017年にJリーグデビューを果たしてリーグ戦14試合に出場したものの、この年はJ1残留争いを強いられた苦しいシーズンで、背番号を14に変えた2018年のリーグ戦出場は1試合のみだった。しかし、2019年の途中から主力に定着し、背番号が10番に変わった2020年以降も中盤に君臨。鋭いドリブルやパスで攻撃を引っ張り、守備でも貢献する絶対的な存在だったが、今年8月に名古屋グランパスに完全移籍している。

 2018年の29番は、MF川村拓夢。サンフレッチェユースからの昇格1年目で、この年はルヴァンカップ3試合に出場したものの、リーグ戦での出場機会はなかった。幼少期からサンフレッチェのファンで会場にも足を運んでおり、プロとしてMF森﨑和幸やMF青山敏弘とポジションを争う立場ながら「試合に出られなくても当たり前だと考えてしまっていた」と、のちに振り返っている。

 翌2019年から当時J2の愛媛に期限付き移籍し、3年間で経験を積んで2022年に復帰。力強い左足のキックと豊富な運動量を武器にシーズン途中から主力となり、天皇杯決勝でのPK戦で失敗して準優勝に終わった悔しさをバネに、ルヴァンカップ初優勝に貢献している。29番から期限付き移籍を経てサンフレッチェの主力となったのは、森脇や野津田と同様のケースだ。

 2020年にはMF浅野雄也が背番号29をつけた。2019年途中に水戸ホーリーホックから完全移籍で加入し、同年は期限付き移籍の形で水戸に残ってプレーを続け、サンフレッチェでのプレーを始める1年目に兄・拓磨も背負っていた番号を託されている。鋭いドリブルと左足からのシュートを武器に、2020年はリーグ戦で5得点、2021年は6得点を挙げた。

 浅野雄が背番号を16に変えた2022年以降、29番は空き番号となっている。次に背番号29を背負う紫の戦士も、歴代の選手のような出世街道を歩んでいけるだろうか。