新井貴浩監督の就任から始まった2023年のカープ。交流戦を勝率5割で乗り切ると、7月後半には破竹の勢いで10連勝を記録。夏場に首位争いを演じるなど、下馬評を覆す躍進を見せた。ここではOB・解説者としてカープを見てきた大野豊氏が“新井カープ躍進の理由”を独自の視点から分析する。(データはすべて9月8日時点のもの)

シーズン終盤には首位・阪神と優勝争いを演じた新井カープ。

先入観に囚われない、『思い切った采配』が特徴の一つ

 監督にもいろいろなタイプがありますが、新井監督の特徴の一つに、『思い切った采配』があげられるのではないかと感じています。選手自身が前向きにとらえることができる起用で、不調な選手やケガ人がいても、慌てることなくうまく戦力をカバーする采配が目立っていました。

 例えば上本崇司の4番起用など、セオリーに囚われることなく、非常に広い視野を持っている印象です。そうした起用方法が、逆に選手にとっては非常に良い方向に向かっているのではないでしょうか。

 野手が打てない、投手が打たれる。そういった試合であっても、新井監督からまず最初に出るのは褒め言葉です。打てなかった、打たれてしまったというのは、選手自身が一番理解していることです。監督がネガティブな言葉を使わず前向きな姿勢でいれば、選手たちも「監督がそう言ってくれるのであれば、次は頑張ろう」という思いにもなるでしょう。

 そして良い意味で、選手自身は考えることができるようになります。気持ちも考え方も、前向きに捉えることができるような、そういった選手個々の自己コントロールをうまく引き出すことができているのだと思います。

広島アスリートマガジン10月号は、「新井カープの結束力」シーズン終盤に差し掛かり、監督初年度を堂林翔太選手と藤井彰人コーチのインタビューで振り返ります。